二十四話
一階に降り、資料室へ入る。小さな部屋で、広さはぼろいアパートの廊下くらいの広さしかなかった。古書と埃の臭いでくらくらしそうになる。
「あれぇ? 西条さんじゃないかぁ」
突然の呼びかけ。薄暗い電球の下に、一人の女性――桐葉がいた。予想しない人物の登場に、真樹は数秒硬直した。
「貴方も資料室にようですかぁ? まさか、呪いを解く手伝いをしてくれるんですね?」
楽しそうにされても困るが、外面には出さないように努める。
「そうなるの、かな」
曖昧に言葉を濁した真樹は、桐葉に習い、本棚に向かう。積極的に調べようとしたわけではない。居心地の悪い桐葉との会話を切り上げるためだった。
本棚には本というより、書類に穴を開け、紐を通した紙類が折り重なっているだけだ。本棚の役割を果たしていない。
「どうやって調べろと?」
膨大な量の資料の前で、あっけなく戦意喪失する真樹に、桐葉はフッと微笑する。
「適当に端から漁っていく方法しかないんじゃないですか?」
桐葉は関係ない資料を地面に落とし、小さな山を形成させる。
「時間かかるよ」
「私はそうやって調べる。呪いを解くため全ての可能性を検証する。時間がかかっても」
黙々と資料を探る桐葉に、思わず質問せずにはいられなかった。
「貴方はなんで一年四組のことについて調べてるの?」
実際のところ疑問だった。桐葉は呪いに触れている人間ではなさそうだった。調べる動機が欠落してるのだ。
「さぁ。なぜだと思う? 調べ始めたのは高校に入ってから。ま、資料室のことは数日前、福田先生から聞いたんだけどねぇ」
また福田先生。一体彼は何者なのか?
「福田先生は私もわかりません。あんなほわほわして探れない人物、私初めてです」
先を読んだように桐葉は発言する。そのまま真樹の返答を期待することなく、資料を地面に放り投げ、本棚からさらに一冊の本を抜き取っていた。




