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二十三話

 数日後。六時間目が終わった直後、真樹は帰宅用のバッグを机の横に立てかけた。今日は帰るつもりはなかった。

 ――夢を見たのだ。気づくと真樹は一人、一年四組の教室にいた。整頓された机。電気もつかない。

 「なんで私はここにいるの?」

 急激な不安感。夢とは思えないリアル。教室の扉をたたいたが、空しく戸がかすかに前後に揺れるだけだった。

 ギィ……ギィ……ギィ……。

 その音は、あの夜のそれと同じものだった。雷に打たれたように硬直する体。

 夢なのに。夢のはずなのに。空気が吸い込めない。過呼吸の症状。やばい。苦しい。

「誰か! 一真ぁ! 助けて!」

扉をガンガンガンガンと叩く。無情にも扉は開く気配を見せない。手が痛くなってくる。何があるかは分かっていた。だからこそ振り返れない。

 ポン。

 冷凍肉のような冷たい手が、肩にかけられた。

 血の気のない、真っ青な手。

 目を覚ました時の嘔吐感。トイレに行く猶予などはなかった。ゴミ箱へ夕食とともに胃液を吐き出す。胃液の味のせいでさらに吐き気が促される。胃袋が空になるまで吐いていた。

 「シャレにならないって……」

 ティッシュで口元をぬぐい、何の気なしに掴まれた肩を見た。

 「いやぁあああ!」

 真樹の肩には、存在を証明するが如く、紫色の手形が残っていた。


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