十八話
夜。隆幸と晴人は近くのレストランで、ビールを飲み交わしていた。何か晴人から発表があるらしい。楓はいない。
「で、どうしたんだ? 今日はノリノリな感じだけど」
「いや~今日は朗報があるのだよ~! 実はですね」
グラスを思い切り机に叩きつける晴人。テンションがハイだ。
「俺! ついについについに一ヵ月半後に楓と結婚しま~す!」
「な! マジ? マジで?」
素で驚いた。アホなことを口走ると思っていたけど、今回はマジでサプライズ。
「結婚すんの? お前まさか、桜井を脅迫して――」
「んなわけねーだろ! いや~人生勝ち組。プレゼントももらったし」
見せられたのは、銀色の光沢を帯びたライター。一目見ただけで高そうだと値踏みできるほどの品物だ。
「うっせぇ。リア充撲滅委員会がお前をつぶしに行くわ」
「それヒド! まあ、色々あったからな。楓も憔悴してるし、俺がフォローしねーと」
心底幸せそうに目じりを下げる晴人に、ひそかに隆幸は安心した。楓は繊細な所がある。そんな彼女には大胆な晴人がお似合いだろう。
「あの夢、まだ見るのか? 冷泉の夢」
ひそかに気になっていることを聞く。ビールの力は偉大かもしれない。
「みたいだ。最近楓、精神安定剤を処方されてるんだよ」
軽いノリで言うも晴人も心配そうだった。ビールで赤らんだ表情をわずかに曇らせる。やはり止まっていなかったのか。隆幸も、あの夢は相変わらず見ている。
「お前早く帰ってあげないとヤバいだろ」
「ああ。次のビールで帰宅することにするぜぇ!」
オールバックをかきあげた晴人は、運ばれてきた最後のビールを一気飲みした。




