十六話
「いや~あの出刃包丁の件で少し気になったからさぁ~」
急にへらへらとした笑いが消え、能面のように無表情になる桐葉は、こう問うた。
「貴方……一年四組に夜行ったでしょ?」
ヒュオォォ、と映画でよくあるような風が吹き荒れ、桐葉の髪がなびく。
真樹は無意識にたまった唾を嚥下した。桐葉の手前、表面上では冷静を取り繕うが、内心は的中されたことに対する驚きが渦巻いていた。なんで分かったのか? なぜそう断定したのか。彼女に対する懐疑が上昇する。
今になって桐葉の両眼が深い青色であることに気付いた。したたかな青だ。
「……なんで分かったの?」
隠そうとしても、彼女は確信している。メリットがない嘘を押し通すのは無駄だと踏んだのだ。
桐葉はやはり、といった調子で口元を歪める。周囲の通行人たちが奇妙なものを見るような目で、真樹ら二人を蛇行して通る。
「霊感、あるんだぁ。私」
曖昧な言葉。
「霊感? それで私が一年四組に行ったことを感知したの?」
「うん。あなたで二人目だよぉ。ドロドロした、腐ったような邪気纏ってるの。なんて言うんだろう。集合霊のような、ドロドロした塊みたいなものかな?」
真樹は霊感がない。自分がそんなものを背負っている実感は湧かない。しかし言葉にできない説得力があったのも事実。むろん、得体のしれない彼女に対して警戒は解かないが、能力は本物らしい。現に怪奇現象が立て続けに起こっている。




