十五話
だけど彼はいつも通りの柔和な笑みを浮かべて、小さなため息を漏らす。
「あのね、僕を甘く見ないでくれ。これでも自衛はできる。君のほうが弱い。だから僕が必ず君を守ってやる」
視線をそらしながら、一真はそう真樹に宣言した。彼の精いっぱいのデレに呆気にとられてしまうが。
「優しいね、一真は」
「別に。お前は自分のことだけ考えればいい――それよりもう少しで授業だ、戻るぞ」
我先に彼が席を立ち、コンピュータルームから出る。耳が赤くなっていた。
「……素直じゃないんだから」
にやつく顔を自然と抑えて、真樹はコンピュータの電源を切った。
帰りは一真が部活だったため、一人で帰ることとなった。一真は部活を休んでまで帰宅時間を合わせようとしてくれたが、さすがにそこまで負担はかけられない。まだ陽は落ちておらず、特に変わった様子もない帰り道。
校舎を見上げると、ほかの生徒の楽器指導している一真が窓ガラス越しに見えた。
「……やっぱりかっこいいな、一真は」
「そうかもねぇ」
ふと耳に入る第三者の声。
振り返ると、そこまで離れていない位置に、一人の少女が立っていた。規律通りの乱れない制服。大和撫子のようなおかっぱ。全てを見透かしているような、感情がない瞳。
「保高さん、だったよね」
クラスメイトであり、委員長である保高桐葉。一見するとただの女子生徒だ。しかし裏があるような、冷徹な雰囲気をまとっているおかげで、このような美貌を持ち合わせていながら、いつもクラスで一人きり。陰のある人だ。
「覚えていてくれたんだ~嬉しいなぁ。関係深くなかったのにぃ」
間延びした、特徴的な語尾だ。
「そうだけど、どうしたの? 突然」
飄々とした態度に真樹は警戒心を強める。人をイラつかせるような特性でもあるのだろうか。綺麗な顔なのに真樹は好きにはなれなかった。




