表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/165

十四話

 「なんであかないんだよぉぉ!」

 思い切り扉を殴りつける晴人の目に涙の膜が張る。畜生! 畜生! なんでだ!

 そして、不自然に、絶叫が途切れた。重い物がゴン、と転がった音がした。

 「持ってきたよ、椅子!」

 楓から椅子をもぎ取って、隆幸は思い切り振りかぶる。

 「うおぉらぁあ!」

 ガシャン!

 扉が吹っ飛んだ。けたたましい音とともに扉が転がり、椅子の一本の脚が弾ける。

 「冷泉! 大丈夫か! おい!」

 勢いよく飛び込んだ隆幸と晴人が、教室を見渡す。

 「冷泉さん、無事? 大丈夫?」

 あとから入ってくる楓の表情が、絶望に染まった。

 先ほどまでに綺麗にされていた机が、あちこちに散っている。窓ガラスにはひびが入り、濃厚な血の臭いが漂っていた。恐ろしい『何か』があったことは、明白だった。

 真樹は、いなかった。じわじわと波紋のごとく広がる絶望と脱力感。

 「冷泉! どこにいるんだ! おい!」

 「返事してよぉ!」

 楓が号泣しながら叫ぶ。返答はなかった。脱出した形跡もない。忽然と真樹は姿を消してしまったのだ。隆幸は地面に崩れ落ちる。扉を叩きすぎたせいで赤くなった手で、隆幸は思い切り地面を殴りつけた。


 その日から、冷泉真樹は行方不明になった。隆幸が見殺しにしたも同然だった。


 目を開ける。晴人と楓が教室内をぶらぶらと見回っている。

 「なにもねーな。……まあ、最初も何もなかったからな」

 机を片っ端から調べていく晴人が言う。その通りだ。帰ろうとした時、凶事は起こった。

 真樹が立っていた場所から外の光景を見る。十五年前とかっちり重なる風景。

 「そろそろ学校が閉まる時間よ。帰らないと」

 黒板を指で撫でている楓が宣言する。時計を見ると、校内に入ってからかなりの時間が経過していた。

 「あ~結局何もわからずじまいかよぉ」

 頭の後ろで手を組んだ晴人が、ちょうど最後の机を調べ終えた。もちろん期待はしていなかったが、それでもやはり失望を禁じ得なかった。

 かすかな落胆を隠しながら、教室の出口へ歩き出す。……真樹、お前は赤門高校にいると言った。何をして欲しかったんだ? 心の中で問いかけても、もはや意味などなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ