十二話
「普通だな、ホント。全く変わり映えねーじゃん!」
肝試しに教室へ入った晴人は、期待させてんじゃねーよと近くの机を蹴り上げた。真樹も先ほど怖がっていたのが嘘のように、外の景色キレイ~と楽しんでいる。あちこちに立つ高層マンション。ミニチュアのような車。夜に外出したことがない真樹からしたら、とても真新しい景色だっただろう。
かくいう隆幸も、予想以上の何もなさに恐怖心は薄れていた。外の景色を楽しんでいる真樹の笑顔をこっそり盗み見るほどだった。
……やっぱり、可愛いな、こいつ。
「御堂君、遠くから見てるだけじゃ、気持ちは伝わんないよ?」
「そりゃ知ってるけど……じゃねーよ! 変なこと言うな! 桜井」
「フフ。照れ屋ね~御堂君は」
楓が冷やかしてきた。思春期の男子にそう言うのやめれ!
「どうしたの? タカちゃん?」
真ん丸な瞳が隆幸の視線と交錯する。綺麗な黒髪がふらりと揺れた。暗がりでなければ、この顔の赤さはばれていただろう。
「い、いや、何でもない。それよりさっさと帰ろう。なにもないんだし」
「そうね。親にも心配かけちゃうし」
「え~めっちゃ楽しいじゃんよぉ!」
ブーイングを飛ばす晴人は捨て置く。そのまま楓が教室を出、続いて隆幸も飛び出す。晴人も渋々といった調子で教室から出、隆幸の肩をつかんだ。
「お前冷てーぞ! ダチならもっといたわってくれよ~」
「うっせぇ。とりあえず帰るぞ」
軽く彼にチョップを加え、教室のほうに振り替える。真樹も楽しかった~と伸びをし、教室から出ようとした時だった。
突然、扉が勝手に閉じた。バン! という衝撃音とともに、外と教室が遮断された。




