百八話
天井にはパイプが一本固定されていた。両端は教室の壁に挟まれており、そのパイプの中央からは首吊りの輪が垂れていた。こんなもの、教室にはなかったはずだ。
すぐ横には壁際に椅子があった。周囲にはロープのようなものが引きちぎられたかのように地面に垂れている。
「首吊りの縄を除けば、まるで冷泉が消えた時にそっくりだな」
隆幸は教室に入る。入口とはいえ隆幸と遠ざかるのをためらう真樹も続く。
「他の教室はこんな荒れてなかったってことは、保高がやったのかな」
隆幸の考察に、真樹は数秒ほど考える。結論からすれば『違う』だった。
桐葉がそんなことをする理由がない。
「だけど、椅子はある」
真樹が着目したのは、ロープが転がっている椅子だった。
「誰かが縛られていたのかな」
「まさか、楓さんが?」
縛られているとすれば、楓しかいない。
「そうかもしれないけど、どうやって中からロープを破った? あいつそんな力ないし華奢だ」
真樹はロープに近づく。断片はまるで引きちぎられたかのようだった。鋭利な物で切り裂かれてはいない。
「あ! これ!」
少し離れた机の横。そこに、見覚えのあるバッグが隠すようにかけられていた。
桐葉のバッグだ。デザインを排除した、シンプルな黒。やはりここに拠点を置いていたのだ。
「なんだこのバッグは」
「保高さんが持ってやつ。この中にあの呪術の紙がしまわれてたの!」
真樹はバッグをとり、中身を机にまいた。出てくる呪いに関連する資料の山。殻のコンビニ弁当もあったということは、一日ほどここに滞在していたに違いない。もちろん過去の事件を記した冊子もあった。
その一枚に、極端に黄ばんだ紙があった。
過去転生。
胸が高鳴る。これだ。思わず嬉々とした声が漏れてしまう。




