百六話
真樹と隆幸は一年一組から、あまり物音を立てないよう探索していく。特に腐食が進んでいる以外は変化がない。そんな中、隆幸は真樹を庇うようにして行動してくれていた。そんな暖かな気遣いがこの状況下の救いだった。
「楓さん、一体どこにいるんでしょうね……」
先ほどから歩いていても、彼女の声が聞こえることはなかった。普通拉致されているならば真樹たちの気配がした瞬間に声をあげて知らせてくれるはず。
「たぶん睡眠薬か何かで意識を奪ってるのかも」
「なるほど。でもなんで保高さんは御堂さんたちもこのゲームに参加させたんでしょう。楓さんを拉致してまで」
「それは分からない。だけど保高は一番の標的が福田先生と言った。……もしかしたら、俺と平野も標的なのかもしれない」
だとしたらそれは、冷泉真樹との関連があるのだろうか。さすがにそれはデリケートな問題だったため、口にはしなかった。
隆幸は淡々と教室を一周し、廊下に出た。表情はいつの間にか強張っていて、額には脂汗が浮いていた。……隆幸も怖いのだ。
次は横の一年二組だ。
「ケータイも圏外だった。それに空から光の直線が落ちてくるなんてことがあったのに近隣住民は騒いでいない。多分外からは普通の学校に見えるのかもな」
二組の教室も何もない。
「だけどなんで保高さんは先生を狙うんでしょう。ここまで大掛かりな設定を作ってまで。……今岡と言う人と関連しているんでしょうか」
「福田先生も隠していたからな。十中八九そうだろうね」
三組に入り、入口からちらりと真樹は福田先生の様子を窺った。どこか落ち着きのない先生がいた。




