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百三話

 「させるかよ」

 一歩進みでたのは晴人だった。鋭く桐葉を睨みつけながら、彼は啖呵を切った。

 「先生だけは死なせねー。十五年前に立ち直らせてくれた恩に報いねーとな」

 ジャックナイフを構える晴人は、中華包丁を向ける桐葉と対峙する。まさしく一触即発。

 「……勝算は低い、か」

 睨み合いの末、先に動いたのは桐葉だった。すぐさま彼女は背を向け走り出す。猫のような素早さで、そばの階段を駆け上がる。

 「あ、てめ、待て!」

 晴人が追おうとする。

 「待て平野! 深追いは――」

 「せめて楓の居場所を吐かせてやる! タカちゃんは三人で固まってさっさと出る方法考えろ!」

 桐葉を追跡し、上へ駆け上がっていく晴人。完全に頭に血が上ってる。

 「おい!」

 隆幸が呼びとめるも、ほどなくして桐葉を追跡した彼の姿も見失った。

 「……カッとなりすぎるなよ」

 こういう癖はやっぱり抜けていない。しかし追ってもメンバーがばらばらになるだけだ。 「平野さんは大丈夫なんですか?」

 不安そうな真樹。隆幸も気がかりではあったが、しかしあいつに言われたとおり脱出する方法を考えるのが先決だと判断する。とにかくここから出ないと。

 「分からない。それより脱出方法を考えよう。保高を引き離した今が好機だ」

 「だけどたぶん出れないですよ。保高さんがそんなハッタリ利かすはずない」

 彼女いわく呪術を発動させたというならば、脱出は不可。一方十二時になったら解除されるというのは信じていいだろう。何より桐葉もこの呪術とやらの渦中にいるのだから。


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