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百二話
「ジャックナイフ……面倒なものを持ってきましたね、平野さん?」
中華包丁を何度も持ち変える桐葉が言い放つ。
「その声――お前が楓を誘拐したのか!」
晴人が激高した。焦っていた様子だった桐葉の表情に、やがて余裕が浮かぶ。
「ご名答。貴方の言うとおりですよぉ」
桐葉はこの場にいる四人を順に観察しながら肩をすくめた。
「楓はどこにやった?」
なお強気に晴人が高圧的に聞く。
「さぁ。少なくともこの学校のどこかかなぁ。教えてあげてもいいですよぉ?」
桐葉は狡猾な微笑みを浮かべ、じろりと晴人の背後にいる福田先生を見た。
「先生をこちらに引き渡してくれたならば、ね」
「先生を?」
隆幸が聞く。すると先生はさぁ、と青ざめた表情を浮かべた。満足そうに、桐葉の目が血走る。
「一番の標的は先生ですから」
「標的だと? ……殺すつもりなのか」
隆幸の質問に、桐葉は不敵な笑みを浮かべ、くるりと中華包丁を手軽に回した。窓から差し込む赤い光が、不気味に桐葉の横顔を照らし出す。
「さっきも言ったように、ここで死亡した者は現実世界から抹消される。よってこの空間はどれだけ人を殺めたとしても許される」
中華包丁を一振りした桐葉は、躊躇なく、晴人の後ろ――先生に向けた。




