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百話
隆幸が振り返る。今のは録音テープじゃない!
真樹がすぐ目の前にいる。彼女は表情をこわばらせていた。
その真後ろに、真樹と同じ制服を身に付けた女子生徒がいた。
悪意を微塵も感じさせないような笑み。何も映していない鏡のような、静かな瞳。
逆手に握られ、ガラ空きの真樹の背を狙うようにした、
一本の中華包丁。
「西条! そこをどけ!」
思い切り横に真樹を押し倒したのと、桐葉が包丁を振り下ろしたのは同時だった。
とっさに前へ突き出した隆幸のナイフと交錯し、黒板を引っ掻いたような音が反射する。刃のなめらかな光沢の中の、血走った自分の目と合う。
「お前……!」
力比べになることなく、後ろへと引く桐葉。
「驚きました。護身用まで持ち込んでいたなんて」
残念そうに、桐葉は刃に指を置いて、すぅ、と撫でた。
「てめぇ……狂ってんじゃねーのか!」
こんな動じることなく人の命を狙おうとする奴なんているはずがない。
「まさか。正常ですよ? ここで死亡した人間は現実世界から抹消されます。捕まらないですからね~」
「そういう問題じゃないだろう!」
「じゃ~どーいう問題ですか?」
桐葉は重心を低くおろし、まっすぐと隆幸を見た。……戦うつもりなのか。冗談だろう?




