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シーン 34 登場人物紹介

コルグス=エルエミオン


ドワーフの男。ドワーフ族は人間の数倍ほど寿命があり人間の実年齢に直すと三十歳半ばと推定される。

人間の持っている残虐なイメージとは異なり、あまり暴力に訴えるタイプではないため、必要に迫られなければ敵意を示すこともない。

ドワーフ族の中では希少な薬剤師の職位を持ち、薬草であるラベンディアから鎮痛作用のあるオイルを抽出する技術を持つ。


ドワーフの中でも中核的な地位に位置しているため、仲間からの信頼は厚いらしい。




初めてのドワーフです。彼が生き残ったことでストーリーが動き始めます。どのように絡んでくるか、それとも出番はもう無いのか…。

 コルグスを解放してやると旅の支度を整えて北へと帰っていった。

 僕らはここから半日かけて町まで戻らなければならない。

 帰りの道中は行きと同じように何度か亜人たちと戦闘になった。

 こうして僕らに対し明らかな殺意を持って向かってくる相手なら心置きなく戦えてしまうから不思議だ。

 これはコルグスと対峙してわかったことだが彼のようなタイプはやりにくくて仕方がない。

 僕が戦うには何か理由がなければならない。

 戦う意志がない者を殺めるのは正当防衛とは言えないからだ。

 

 帰り道中は少し険悪な雰囲気だった。

 ニーナは終始無言で眉間に皺を寄せている。

 僕がコルグスを助けたことを不服に思っていると言うより殲滅作戦について話たことを不快に思っているようだ。

 同時に不信感も生まれたらしい。

 彼女の態度を見て何の感情も抱かないわけではないが、同情する気持ちにはならなかった。

 それに、おそらく彼女は北の殲滅作戦に参加するつもりだったのだろう。

 帝都直轄の精鋭部隊に参加ともなれば仕事の成功報酬はハンターギルドを通じて稼ぐ懸賞金よりも割りがいいはずだ。

 上手くすれば皇帝が管理する部隊への入隊も視野に入れていたに違いない。

 もちろんこれで戦争が回避されたと言う保証はなく、ニーナの取り越し苦労に終わる可能性だってある。

 コルグスに伝えた言葉がどれだけ有効なのかはわからないが何も伝えないよりはマシだろう。

 僕としてはあの場でコルグスを逃がしたことも殲滅作戦について伝えたことも後悔してはいない。

 この微妙な温度差のおかげで町に着くまで両者の間に無言が続いた。

 何か話すことがあれば仲介役のサフラを通すと言う奇妙な状況だ。

 正直言ってあまり心地のいいものではない。


 「…ま、町が見えて来ました!」

 「そうだな」

 「あぁ、まずはギルドに報告だ…コレを見て納得するか…だがね」


 ニーナはコルグスから受け取ったペンダントを訝しく眺めた。

 ドワーフだけが扱える金属とは言え似たような色合いの金属や鉱石は他にもあるのだろう。

 素人目に見れば価値があるようには見えない。

 これがダマスカス鋼だと言われ納得する人間はどれほどいるだろうか。

 誰にも理解されなければ報告しても意味はなく、下手をすれば虚偽の報告をしたと訴えられる可能性もある。

 どちらにしてもこの他に証拠となるもはないため今さら騒いでも後の祭りだ。


 「…まぁ、考えるよりギルドに行ってみよう。交渉は俺に任せてくれ」


 僕らはその足でハンターギルドへ報告に向かった。

 受付の男に声をかけて事情を説明すると眉をひそめて難しい顔をしている。

 そして、奥の待合室に入るよう言われた。

 待合室と言っても木製の丸椅子と長方形のテーブルが置いてあるだけで家具や調度品はない。

 壁には明かり取りの小さな窓が一つ設けられ鉄の格子が取り付けられている。

 雰囲気は刑事モノのドラマで見かける警察署の取調室と言うべきだろうか。

 ただし、案内してくれた男の様子ではこれから取調べが行われるようには思えない。

 しばらくすると若い男の職員が現れさらに別の部屋に案内された。

 通されたのは支部長室だ。

 ここへ来るのは今回で二度目となる。


 「おぉ、キミたち、また会えたね」

 「どうも」

 「受付の者から報告は受けているよ。ドワーフを倒したんだって?」

 「え、えぇ…これが証拠です」


 そう言ってニーナはペンダントを差し出した。


 「この輝きは…まさかダマスカス鋼か?」

 「わかるんですか?」

 「あぁ、昔、前線で活動している時にドワーフから戦利品として奪ったことがあるんだ。確かにこれと同じ色をしていた」

 「では話が早いですね。これは討伐したドワーフから奪った物です。証拠にはなりませんか?」


 ここはこれ以上疑問に持たれる前に話を終わらせるに限る。

 下手に疑問を持たれては話がややこしくなるので手早く終わらせなければならない。


 「なるほど。わかった、バレルゴブリンのこともある。キミたちを信じ討伐達成として受理しよう」

 「ありがとうございます」

 「係の者に懸賞金を準備させる。キミたちは待合室に戻っていてくれ」


 支部長は話を終えるとペンダントに目を落とした。

 珍しい鉱石と言うだけありそれだけで価値のあるもののようだ。

 僕としてはコルグスから受け取った大切な物なので出来るなら返してもらいと思っている。

 しかし、証拠品として提出しているため返って来る見込みは未知数だ。

 それでもこのまま何もしないよりわずかな可能性に賭ける価値はあるだろう。


 「あの、一つ確認なのですが、そのペンダントは返して貰えませんか?」

 「ん?まあ、確認は終わっているからそれは可能だが…何故かね?」

 「あのドワーフはとても手強い相手でした。自身の実力を証明するためにも、討伐した証を残しておきたいんです。…ダメでしょうか?」

 「なるほど、そう言うことならこれは返しておこう」


 支部長は大きく頷いてペンダントを返してくれた。

 彼はダマスカス鋼が珍しいことは知っていてもあまり執着がないらしい。

 戻ってきたダマスカス鋼を鞄の奥に仕舞い指示通り待合室へと移動をした。

 しばらくすると先ほど僕らを案内した職員が革袋を持って現れた。

 しかし、手元にいつもの詳細が書かれた書類を持っていない。


 「こちらが懸賞金です。それぞれに振りわけてありますので各自お受け取りください」

 「ありがとうございます。そう言えばいつもの書類は無いんですか?」

 「証書の発行には少し時間が掛かりますので、必要でしたら後日お越しください。明朝には準備しておきます」

 「私は頂きたい。用意してもらえるかな?」

 「わかりました。レイジ殿はどうされますか?」

 「いや、アナタ方を信じているので遠慮しますよ」

 「それではニーナ殿の書類を用意しておきます。係の者にお申し付けください」

 「わかった。またその頃にお邪魔しよう」


 用件を済ませると職員は部屋を出て行った。

 僕らも用事が終わったのでこれ以上長居をする必要はない。

 職員の後を追うように部屋を出てハンターギルドを後にした。


 「ふう…何とか無事に済んだな」

 「私は肝を冷やしたよ。バレルゴブリンの一件が無ければこうもウマくいかなかっただろうさ」

 「私もヒヤヒヤしました…。まだ胸がドキドキしてます」

 「あの感じだと大丈夫そうだとは思うけど、まさか気付かれたってことはないよな?」

 「どうだろうな。私も支部長の変化に注意していたが、表情に変化はなかったし大丈夫だろう」

 「今後は危ない橋を渡るのは止めようね」

 「あぁ、当面はないだろうな。それよりもたくさん歩いて疲れた。宿に戻ろうか」

 「私はここで失礼する。また何かあればこちらから伺うからな」


 それだけ言ってニーナは去っていった。

 相変わらずと言えば相変わらずだが今日の雰囲気にはどこか影を感じる。

 偽りの討伐を報告したことにあまり納得していないと言う印象だ。

 僕にしてみれば予定通りに事が運びホッと胸を撫で下ろしている。

 サフラが言う通りあまり危険な橋は渡りたくはない。

 次も成功すると言う保証がない以上こんな報告をするのは最後の手段と位置づけた方がよさそうだ。

 何事も度がすぎれば毒になる。

 受け取った懸賞金の額も気になるところだが、ひとまず今は無事に帰って来ることが出来本当に良かった。

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