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シーン 25 登場人物紹介

クオル=レスター


ハンターの青年。歳は主人公よりも二つ上。

ハンターとしての腕は一流だがコミュニケーション能力に難アリ。常に強い者を求める傾向があり、相手を腕っ節の強さで判断する面がある。

ニーナには頭が上がらず、彼女の前では借りてきた猫の様になることもしばしば。

「エルフキラー」の二つ名を持つ。

性格は一途で、一匹狼っぽい。


使用武器:ブレイズソード(エルフから奪ったミスリル製のショートソード)使用者は筋力が増幅し炎を操ることができる。



ダイド


腕の立つハンターでクオルの先輩。

口数は多くはないが紳士的な一面があり、同僚だけでなく町の住民たちからも信頼が厚い。


 翌朝。

 各々が準備を済ませて町の入口に集った。

 人数は当初の予定では四人だったが一人見慣れない顔が含まれている。

 彼はクオルの先輩で「ダイド」と言うそうだ。

 クオルによればハンターギルドの中でも中堅の実力者だと言う。

 歳は三十代半ばであまり口数の多い性格ではないらしい。

 実際、出会った直後は軽い会釈を交えた挨拶があった程度で自分から名前を名乗ることはなかった。

 しかし、仕事熱心で情に厚い性格なので仲間のハンターだけではなく町の人からも信頼がある人物のようだ。


 僕らは準備を済ませゴブリンが占拠するトンネルに入った。

 トンネルと言う閉鎖された空間は息が詰りそうになる。

 ゴブリンが潜んでいると言うこともあって異様な雰囲気に包まれていた。

 トンネルの中にはこの辺りでしか見られない「発光石」と言う珍しい鉱石がありホタルほどの淡い光を放っている。

 発光石はトンネル内の至るところにあるため多くの光が集れば十分に視界が確保されると言うわけだ。

 さながら自然の照明器具といったところか。

 おかげで松明を使わなくても視界が確保されている。

 僕らは慎重に歩みを進めた。

 事前の打ち合わせ通りクオルとダイドが前衛を務めている。 


 トンネルの奥へ進むにつれ微かに鼻を突く「腐臭」が漂ってきた。

 まるでドブ川のヘドロの臭いだ。

 この臭いはゴブリンが放つ一種のフェロモンらしい。

 この刺激の強い臭いに誘われ仲間のゴブリンが集ると言う。

 ただし、この臭いは普段人間が認識出来ないほど微量なもので、ここにいる全員が認識できるほど強く感じられるのは異常な事態だ。

 トンネルが閉鎖された空間と言うこともあるがこの奥には相当な数のゴブリンが居ることを示唆している。


 「…酷い臭いだな。鼻がもげそうだ」

 「これほど臭うと言うのは他に例がない。念のためマスクを持ってきて正解だったな」


 ダイドはトンネルへ入る前にハンターギルドから支給されたバンダナを一人ずつに手渡していた。

 これで鼻と口を覆いマスクのように使うそうだ。

 ただ、ビジュアルが海外の映画に登場するような「マフィア」や「ギャング団」のようにしか見えない。

 町で出会ったら間違いなく距離を置きたくなる集団だ。

 バンダナにはミントのようなハーブから抽出したエキスを染み込ませてあり嫌な臭いを中和する効果もあるそうだ。

 実際に着けてみたところいくらか臭いが中和され呼吸も楽にできた。

 サフラはお互いの顔を見合い、いつもの優しい笑みを浮かべている。

 緊張感がないと言えばそれまでだが彼女が笑みを浮かべたことでいくらか肩の力が抜けて余裕が生まれた。

 ニーナもそんな姿を見て笑みを浮かべている。


 このトンネル内に巣食うコブリンたちは普段平原で出会うような個体とは違う特徴があった。

 ゴブリン自体は集団で行動することが珍しくない亜人だが、ここに居るゴブリンは訓練されたように統率された動きを見せる。

 このような個体は過去に発見された例がないそうだ。

 ダイドの話で狡猾なバレルゴブリンが仲間に戦い方を教えているのだろうと言っていた。

 一体の強さは並みのゴブリンと変わらないが連携の取れた動きで攻められれば多少手強く感じられる。

 それでも僕らほどの実力になればゴブリンが何匹集まろうが相手にはならない。

 特にクオルやダイドは涼しい顔でゴブリンを斬り伏せている。

 事前の情報通り彼らの実力は相当なものだ。


 「それにしてもレイジ君、キミの持っている武器は凄まじい威力だな。あんな武器は初めて見る」

 「きっと、ゴブリンの着ている革の鎧なら弾が貫通すると思いますよ」


 ハンターという職業上、他人が使っている武器は気になるのだろう。

 ダイドは道すがら銃について興味深げな様子で何度も質問を投げかけてきた。

 そんな彼はハンターとしては標準的な装備に身を包んでいる。

 鉄板を張り合わせて作った「プレートメイル」を身に付け、手には「ブロードソード」と「バックラー」を装備している。

 この組み合わせは攻守のバランスに優れておりハンターの間でも人気の装備だ。

 特に小型の盾であるバックラーは攻撃を受け流すのに優れ取り回しの良さから攻勢に転じやすい。

 ブロードソードも一般的な細身のサーベルに比べて肉厚で「斬る」と言うよりは重さを利用して「叩き斬る」と言う表現が似合う武器だ。

 また、剣そのものに重さがあるため腕力がなければ満足に扱うことができない。


 それに対し後輩のクオルは盾や鎧と言った重装備は身につけていなかった。

 代わりに鎖を編み込んで作った「チェーンメイル」と言うものを服の下に装備している。

 これは刃物による斬撃に強くプレートメイルよりも軽快な動きに向いているそうだ。

 クオルのような剣術に自信のあるハンターが好んで身に付けるものだと言う。

 ただし、鋭利な刃物による「突き攻撃」には弱いため先端の尖った「レイピア」や「スティレット」それに弓矢による攻撃は天敵らしい。


 ニーナもクオルとほぼ同じ装備で身軽さを生かした連続攻撃を得意としている。

 特にニーナはクオルよりも俊敏性に特質するものがあり、戦闘時には非力を補うのに十分な身のこなしで剣を振るう。

 その動きはまるで重力を感じさせず踊っているようだ。


 「…気配がする。数は多くないが気をつけろ…来るぞ!」


 前衛のすぐ後ろを歩いていたニーナが敵を察知すると剣を抜いて陣形を取るように指示を出した。

 前方には二体のゴブリンが武器を持ち醜い顔を歪ませてこちらを見ている。

 僕は後方から一体の眉間を撃ち抜いて息の根を止めた。

 突然の出来事に動揺しているもう一体はダイドがいち早く駆け出し一振りで仕留めると呆気ない幕引きとなる。

 出遭ってからわずか数秒の出来事だった。


 「ふむ…私の出番はナシ…か」

 「私の出番もありませんでした」

 「いや、女性陣の手を汚すまでもないよ。特にサフラちゃんはね」

 「えっと、ありがとうございます、ダイドさん」

 「うむ、では気を引き締めていこう。そろそろヤツも近くに居るはずだ」


 年長者であるダイドは紳士的に女性陣のフォローをしている。

 こう言うところは見習わなければならない。

 クオルはまだ戦い足りないのかそんなことはお構いなしに先へ行ってしまった。

 ここでもコミュニケーション能力の低さを露呈し、先輩のダイドは何も言わず苦笑している。

 彼も苦労をしているのだろう。


 さらに奥へ進むと悪臭の酷いフロアにたどり着いた。

 ここは採掘した鉄鉱石を一時的に山積みにしておく広場のようだ。

 山積みにされた鉄鉱石はトロッコに乗せられ外へと運ばれて行く。

 しかし、このトンネルはすでに廃鉱になっているため鉄鉱石は見当たらなかった。

 これまで歩いてきた通路とは違い天井が五メートル近くあり、広さも畳みの換算で五十畳以上はあるだろうか。

 相当大きな空間だ。

 その中に無数の緑色をした亜人が蠢いている。

 数にして五十体近くいるだろうか。

 どうやらここがゴブリンたちの「ねぐら」になっているようだ。

 先ほどよりも臭いが強くバンダナの上からでも鼻を押さえたくなるほどだった。


 「…いやがるな。こんな数のゴブリンは初めてだ。みんな、一気に斬り伏せるぞ!」


 ダイドは雄叫びを上げ気合を入れると真っ先にゴブリンの集団へと駆けていった。

 それに続けとクオルも剣を抜き真っ赤に燃え上がる刀身を振りかざして敵陣へと突っ込んで行く。

 まず、ダイドが放った一撃で数体のゴブリンが肉塊へと変わる。

 続けてクオルが炎を帯びた剣で近くに居たゴブリンを斬り伏せた。

 ニーナは三日月状の剣「ショーテル」を構え二人をかわして迫ってくるゴブリンの首を素早く斬り落としていく。

 ショーテルはその独特な形状から首に引っ掛けて使う武器だ。


 僕は集団から離れこの場から逃げ出すゴブリンを狙い撃ちながら最前線の二人を援護した。

 サフラは事前の打ち合わせ通り背後から敵が来ないか注意しつつ警戒している。

 スティレットを握る手にも力が入っているようだ。

 ここまでは想定していた通りにことが運んでいる。 

 数に勝るゴブリンも自分たちより強い相手には歯が立たず、ものの数分で半数近くが物言わぬ肉塊へと変わった。

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