毎年の行事
そういえば、と一条が口を開いた。
「雨宮、来週の土曜日空いてるか」
「土曜日? 空いてない」
「即答すんな。考えてから言えよ」
「考える必要がねえんだよ、その日は凛の誕生日なんだ」
今日の日直は理玖だった。当番の役割の一つであるはずの黒板消しは、クラスの女子が率先して終わらせていた。当の本人は、自席に座って、「ありがとうね、助かるわ」
と礼を言うだけだ。
相手は嬉しそうに手を振った。
一条は、なんでこのクラスの女子ってこんなチョロいのかねと、その光景を見て呆れた。
「何かすんの」
「出かける。朝から」
「どこ行くんだよ」
「動物園」
理玖が即答する。
「凛ちゃんが行きたいって? あの子顔も言うことも可愛いな、性格悪いけど」
「凛は性格も可愛いだろ。いや、おれが行きたいの。初めてどっか連れて行ったのが、動物園だから。それから毎年行ってんだよ、誕生日に」
「あー…そーですか」
聞かなければ良かったと、一条は後悔した。文化祭の打ち上げをやろうとクラスで決まったのはいいが、どうにか理玖を参加させてくれと頼まれていた。しかしどうやら無理なようだと判断した。
「もしだけどさ、」
思い付いた質問の答えがどうしても知りたくて、一条は身を乗り出した。
「彼女と凛ちゃんの誕生日が一緒だったらどうするん、おまえ」
「付き合わなけりゃいいじゃん」
「あー…やっぱりそーですよね」
一条は呆れた顔をしただけだった。




