暴走する食糧
悪夢だ。保管されていた「クラフト」達が暴走した。
人を襲い、『抱きしめる』。言葉だけなら可愛い物だが、実際は「絞め殺し」だ。
それが厄介にも大量に解き放たれた。数えたくも無いくらいに。「ラリマー」が大人になるまでのクラフトを用意していたんだ。計算は勝手にやってくれ。
俺は頭を抱えながら車を走らせた。何が原因だ、どこを間違えたんだ、渦巻く頭を掻き毟りながら愛する娘の元へ向かった。
道中何人かのクラフトを轢いた。罪滅ぼしのつもりでやったが罪悪感が凄い。やはり俺には、人を殺める事なんて出来ないんだ。
暴れる同士たちを眺めながらラリマーを抱く。今の僕に出来ることは、それくらいしかない。
「もう少しで栄養が取れるよ」
「……まずそう」
「好き嫌いはダメだよ」
「……モルがいい」
その言葉に体がピクリと反応する。
「……僕は…どうしたら…」
ラリマーは返事をくれない。ゆっくりとラリマーから離れてクラフトと、潰された『栄養』を見つめる。
「僕が…食べればいいのかな…」
僕たちは仲間だ。食べれば共食い、考えた事もなかった。
でもラリマーは、一人ぼっちで「人を食べていた」。その当たり前を、今までなんとも思わなかったのに。
「無理しなくていい…」
ラリマーがか細い声で言う。
「僕は……!」
大きく唾を飲み込む。覚悟なんて決めてられない。僕は…ラリマーの為ならなんでも……
ドンっ
モルは、車に轢かれた。




