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ECLIPCE BLADE  作者: 月海 ほたる


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第2章 第2話「HOME」

―何でだよ!?

お袋が死にそうなんだぞ!?

何で…何でこんなときに海に行くんだ!?


―海が呼んでるとか、そんなことは

どうでもいいんだよ!!

今、アンタが…親父がいねーと

お袋は死んじまうんだぞ!?

それでもアンタは行くってのか!?

それも、俺を連れて!!

―「絶対に嫌だね。

てめーみたいな奴になんか、絶対に着いていかねー。

てめーが親父だったこと、金輪際認めねーからな。


…弱いくせに。



また、夢を見た。

この乱暴な口調。ホークの夢だ。


ほんの少しだけ、肌も髪も、白くなってきてる気がした。



波は穏やか。

モンスターが出る気配もない。

順風満帆な航海だ。


「ドリス戦線以来、帝国の監視の目が止まってる。」

航海開始から数時間してハンナが言った。


「クリスの予想通り、帝国は態勢の立て直しで

いっぱいいっぱいになってるみたい。

帝国は完全に私達をロストしてるね。

だから、東国での修行にはもってこいの状況だよ。」

帝国の監視下から外れたのは大きい。

何かあったとしても、本気を出すことができる。


しかしそんな安堵感よりも

冷静に状況を判断しているハンナ自身が


誰よりもうずうずしている様子に一抹の不安を覚える。


「勘弁してくれ…


君の本気は直に見ていないが、

おおよその見当はつく。」


「おっと、ハンナ、そこまでだ!!」


ホークが前に出てくる。


「修行の予行修行ってな。

クリスの面は貸してもらうぜ?

玄斎先生って人はスパルタなんだろ?


で、

お前はその弟子なんだろ?


だったら、まず弟子のしごきに慣れねーとなぁ。


てな訳で、よろしく!!」


「ハンナよりかはマシだが…

お前もお前だ、ホーク。


いいだろう。


相手してやる。」


少しずつ変わり始めている。

え~!ずる~い!

なんて悪態をつきながらも甲板へ向かう二人を見て

微笑むハンナを筆頭に、みんな笑っていた。


不器用、素直じゃない


でも一度素を見せると、

少しずつ本当の自分を見せ始める。

少なくとも、反発はしない。

静かに、寄り添うようになる。


アイリスが言う。


激突する二本の剣。

以前よりも迫力を増したホークの大剣さえも軽々と受け止める。

しかし、そこに拒絶はなかった。


弾く。


相変わらずの無表情。


しかし受け止めている。


アイリスの言う通り、

寄り添うかのようにも見えてしまう。


気が付いたら数時間が経過していた。


一部始終、ホークの剣戟を受け止め続けたクリス。

流石に少し息を切らしている。

「ああ、これなら、

玄斎先生の修行にも、耐えれるかもしれないな。」

「ありがとよ…

とりあえず…タバコでも吸いにいかねーか?」

「悪く、ない。」


もう彼に対する警戒心はなくなっていた。

稽古、という形であるが刃を交えた後に

喫煙所に歩いていく姿は戦友そのものだった。


夜が明けた。

船は東国へと彼らを導く。


クリスとアイリスの養父、

玄斎の家まで歩いて数十分とのことだった。

見慣れない、異国情緒漂う街並み。


かと言って、文明が遅れている訳ではない。

ちゃんと機械もあれば、電子機器もある。


違うのは風情。


どうやら今は所謂『秋』らしい。

美しい、深みのかかった赤色の葉が、

街を彩っている。


四季。


今までなかった概念に心を躍らせながら歩き、

古ぼけた屋敷に辿り着く。

横開きの戸をこじ開け、屋敷の中へと入っていく。


「帰ってきたか。」


「玄斎先生。」


屋敷の奥に「先生」と呼ばれた男性がいた。


先生、養父、師範。


どのワードにも似付かわしくない若々しさ。

まだ髪は黒い。細身なようでしかし屈強な体つき。


「帰ってきたか。

風の噂には聞いていた。

キングダム解放と、ドリス攻防戦。

どちらにもお前が一枚噛んでいると思っていたが…」


「はい。3年前、ここを出立する前に、

帝国の動向を探ると申しました。

その通り、3年間探り、

そしてここ数週間で帝国の者と再び相まみえました。

何とか生きています。

しかし…」


「多くは語るな。」


玄斎がクリスの言葉を遮る。


「多くは語らずとも分かる。

お前の手に負えるようであれば、

ここには帰ってきてないだろう?

お前自身、少し後悔している。

そして、お前の仲間達も強くなりたいと思っている。」

「…流石です。」


全てを見透かすような玄斎の言葉に息を呑む。


流石はクリスの師匠。

冷静で、判断、予測を見誤らない。


しかし、

そこには確かに優しさがあった。


「先生。

クリスもそうなんだけど、

特に強くなりたいって思ってるのは

この二人。

ホークさんと、ディーネさん。


ホークさんは既に強い、

腕っぷしもそうだし、タンカーとしてみんなを

守る意志もすごい。

でもまだまだ、もっと、確かに、

みんなを守れるようになりたいと思ってる。

剣士としても、護り手としても。


そして本命はディーネさん。

今までずっと弓で戦ってきた。


でも、守られる位置から、

みんなを守ろうとする位置に行くために

ランサーになろうとしてる。


ディーネさんに、槍を教えてあげてほしいんだ?」


「ふむ…アルベルトのご息女か。

なるほど、確かに、筋はある。」

「父をご存じなんですか!?」

「ああ、君が生まれる、ちょっと前にね?」


そう言いながら、ホークにも目を向ける。


「強くなりたい…か…」


そう呟き、おもむろに立ち上がる。


「よかろう。

必ず、帝国に勝たせる。


そして自身を越えさせてみせよう。


私を訪ねてきたのが正解だと、

必ず思ってもらう。


覚悟は、いいね?

ホーク、ディーネ?」


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