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ECLIPCE BLADE  作者: 月海 ほたる


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第19話「ROSIER」

轟音。

二人とも動いていない。

飛び交う鉄球を鉄塊が撃ち落とす。

異常なまでの熱量。

動く。

轟音。


「力自慢なのはいいけどよ…

こんだけ強けりゃ正義にでもなれたんじゃねーのか!?」

「まるで我々が悪のような言い方だな!!

だとしたら違う、

力こそが正義だ!!」

「だと思ったぜ!」

動かなかったホークとウォードがぶつかり合う。



ベネディクトという青年は、

名乗った直後、

龍の化身を呼び出していた。

禁忌。

召喚ではない、“具現化”。


「馬鹿げてる…」


ソフィアが呟く。


「何が?」


ベネディクトが呟く。


「話に聞いたことがある。

禁忌の魔術に手を出した“愚者”がいるって。

その魔術師の名前がベネディクト。」

「で?

僕が、何か悪いことでもした?」


-アイツより質が悪い…!!


いつもなら止められていたが、

いつも止める立場のレオンは「帝国軍ナンバー1」と交戦していた。

そんなレオンを尻目に、思わずにやけてしまうソフィア。

「そっか…

本当はよくないんだけど。

今日はやっと、ようやく、

本気出してぶちのめしていいんだね?」

「できる?君に。」

「ええ。

何せ、本当にごめん。

私がイラついてるのは貴方に対してだけじゃないから!!」



冷たい風が向かい風となっている。

進めない。

「何だ、珍しいな。

もしかして、守ろうと思っているのか?」

剣筋も、その音も、何もかもが冷たい、

喉の奥を乾かすような匂いも感知できる。

「口ではどうこう言っていても、君は意外と律儀だからな。」

「成程、流石だ。

俺の性格は重々承知しているわけか。」

ハンナのような、五感さえも超えるような速さもない、

ホークのような破壊力もない、というか

破壊力で言えば恐らくウォードがホークの陣に殴り込んでいるだろう。

しかし、冷酷無比でまるで精密機械のよう、

何よりも、理性でクリスを抑えてくる。

クリスがナイトに戻らないように、

誰かを守るという意識を失わないように。

そこに対しての布陣は完璧。

正に、「氷の女」。

灯一つから誰にも止められない焦熱になってしまうクリスを

的確に、この場にとどめる。


-分かっている。

ここにナイトの…ウォードでも、シークでもいい。

ナイトを配置していたら俺は止まらなくなる。

だから、帝国軍一の冷静で冷酷な女を配置した。

そして、前進も後退もできなくする。

俺の動きを止めることで、

全ての機能をマヒさせることができる。

レオン達のところにはサイザーがいっているだろう。

そして、恐らくそこにはベネディクトが…

完璧だ。

観察され尽くされた。


「坊や。

せめてもの慈悲だ。

君が守りたいと思うのであれば、

ドリス軍を撤退させよ。

そうすれば、処刑するのは君達だけにする。

もっとも、ドリス軍が「英雄国家」から「負け犬国家」に

転落するのを認めればの話だがな。」


「それはどうかなー?」


澄んだ声が響く。


白い閃光が、クリスとエルフリーデの間に割って入る。


「貴様…

ハンナ・ヴァレンタイン…」


制御し尽くしたと思っていた。

凍てついてるからこそ、吹雪であるからこそ

クリスという熱源を制御できたと思っていた。

しかし、そこに現れた白い「不協和音」。


「やっぱりね。

シークがあそこで出てきた時点で分かってた。

私達は観測されてる。

だから、アンタ達の布陣が完璧になった。

…って、思ったでしょ?


クリスはそれを見越してた。

だから、

私を何処の部隊にも配置しない。

ヤバい!と思ったところに行けるようにしてくれてた。


だから、ここに来ることができたよ。」


前夜。

黒い麦酒を飲み終えたハンナ。

部屋を去ろうとするハンナに声をかける。

「気付いているだろう?」

「勿論。」

「なら話は早い。

信じてもいいと、言ったな。

君はどこの部隊にも配属されないでくれ。」

「分かってるって。」

神妙な顔で伝えるクリスに対して、

相変わらず拍子抜けしてしまいそうなあっけらかんとした

朗らかな表情で答える。

「大丈夫、

私はクリスのことを信じてるし、

信じてもらえるようにするから。

帝国の監視以上に、“私が監視”する。

分かってる。

ただ…

その代わり、あなたを危険な目に遭わせる。」

「それが、目的だ。」



「私の役割は、クリスを前に進ませること。

守ることじゃない。

クリスが前に進まないと、アンタ達を倒せないからね。」


長く、深く語る必要はなかった。

全てのメロディを、ハーモニーを、リズムを壊す。

ただそれだけ。

エルフリーデとクリスの間に立ち、力強く謳う。

クリスに見せたその背中は、

最初に見た通り、華奢、しかし逞しい。

そして確かに意志を放っていた。


「行って。」


「…頼んだぞ。」


「させるか!!」


そういってクリスの前進を止めようとしたエルフリーデの一閃は、

天使によって弾かれる。


「貴様…正気か?

この私に単独で戦いを挑む気か?」


自慢の一閃を弾かれたエルフリーデが問う。

氷点下。

温度が逆行している。


「ちょっと違うかな~?

さっきも言ったけど、私はクリスを前に進ませるだけ。

別に貴女を倒そうとか、

何なら戦おうとも思ってないよ?」


「何だと…?」


平熱。


「あのさ~…

帝国の人って、クリスも含めてなんだけど

すごい曖昧な表現をするよね?

倒すなら倒すでいいじゃん?

守るなら守るでいいじゃん?

何でかなって思ってたけど、

とりあえず、

考えてたんだ。

こういうときに、『どんだけ表現をぼやかそうか』、って。

だから…」


エルフリーデの眼前に現れる白い天使。

エルフリーデが剣を振るった後には彼女はいなかった。

僅かに残る閃光だけを残して元の位置にいた。


「だから、『遊ぼう』?」


声が消えたときには、

背後にいた。


「…!貴様…!」


今度は目の前にいた。


「やっぱり、よく見ると美人さんだね~?

それも、騎士様、将軍様なんて。

だったら…」



白い天使は呟く。

初めて、エルフリーデは恐怖した。

その速さではない。

この異常なまでの状況で嗤う彼女、

そんな彼女から放たれた言葉に。


『踊ろう?』


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