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モブ令嬢にそんな『魔力』はいりません!  作者: 黒い猫
第十七章 試験にて
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第五話


「――そう」


 しかし、リチャード王子の話を聞いたクローズの反応は意外にもあっさりとしたモノだった。


 でも、考えてみたらアリアと会った時点で既に疑っていたのだから、むしろ「やっぱり」という気持ちの方が強かったのかも知れない。


「……」

「――あなたと初めて話をした後。やっぱり少し気になってね。調べてもらったの、リチャード様の事」


 無言のままうつむくアリアを見ながらクローズは何事もないかの様に話し始める。


「そうしたら、一人の女子生徒と随分と仲良くしている事を知ったわ。私の事はないがしろにしてね」

「……」

「正直……迷いが出たのも事実よ」

「そ、それでは……」


 アリアはそれを聞いて少し焦った。


 クローズがリチャード王子の事を調べたという事は、当然その相手……ソフィリアの事も知っているという事になるのだろう。


「でも、今あなたから話を聞いてその迷いも吹っ切れたわ。ただ、今はまだただの次期生徒会の役員同士にしては距離がかなり近い……という事くらいしか分かっていないわ。でも、この調子じゃあいつボロを出すか分からないわね」


 そう言いながらクローズは「はぁ」と重めのため息を漏らす。


「元々……お互い望んでいなかったとは言え、それでも……と思っていたのよ。正直、今は裏切られたような気分ね」

「……」

「でも、元を辿ると結局私が悪いのよね」

「そ、そんな……。そもそもは――」


 アリアが言葉を続けようとすると、クローズはそれを「いいのよ」と言いながら片手で制した。


「原因は何であれ、私が応戦した事によって事態は大きくなってしまったもの。それは間違いではないわ」

「……」


 それは確かにそうかも知れない。しかし、アリアとしては全然腑に落ちない。


「――それにね。私はこのまま黙っているつもりはないわ。今のあなたの話を聞いて調査結果でしか分からなかった事も確信に変わったし、それに……やられっぱなしは好きじゃないの」


 そう言ってクローズは軽くウインクをして「今日も魔法の練習。お願いね」と言って足取り軽く自分の教室へと戻って行った。


 ――何とも切り替えの早い……いや、強い人だろうか。


◆   ◆   ◆   ◆   ◆


「――もう、大丈夫そうだね」


 クローズが教室へと戻ってすぐ、キュリオス王子は突然アリアの背後に現れた。


「……聞いていたのですか」


 何となく人の気配はしていたので特に驚く事もなく尋ねると、王子は「まぁね」と言いつつ少し残念そうな表情を見せる。


「公爵と連絡が取れた。とにかく今は娘のやりたい様にさせるとの事だよ」

「……そうですか」


 公爵とどうやって連絡を取ったのかは……聞かない方が良いだろう。


「それより……」

「はい」

「この試験が終わったら長期休暇になるけど……」


 そう言いつつ王子は軽く目配せをする。どうやら王子はアリアがどう過ごすのか気になるらしい。


「私は……とりあえず寮にいます。あ、でも一度お兄様と会う予定はしておりますが」


 アリアがそう答えると、キュリオス王子はどことなくホッとした様子で「そっか」と笑う。


「殿下はどうされますか?」

「僕は一度戻るよ。でも、アリアが寮にいるのなら早めに戻ろうかな。兄上は……多分休暇中はほとんど王宮にはいないだろうし」

「……」


 ふと、最後の方の言葉に皮肉らしきモノが聞こえた様な気がしたが……ツッコむのは止めておこう。


「休暇が終わったらクラス替えに……あ。後は『星空会』だね」

「!」


 王子が何気なく言った『星空会』という事にアリアは思わず反応した。


 なぜならその『星空会』は……前世でプレイしたゲーム中でかなり重要なイベントだったからである。

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