第一話
「はぁ……」
「どうされました。お嬢様」
「あ、ごめん。漏れてた?」
そう尋ねると、リアは「はい」と素直に頷く。
「お疲れの様でしたら今日は早めに休まれた方がよろしいのでは? 明日はケビン様にお会いになるご予定ですし」
リアはアリアを気遣う様にそう提案する。
「ああ、疲れているというワケじゃないの。ただね……」
「?」
アリアがチラッと向けた視線の先には、今日配られたばかりの『成績表』が置かれており、リアはそれをチラッと確認して「なるほど」と頷いた。
「はぁ、結局今回も勝てなかったわ」
「しかし今回も学年全体の成績は二位。十分良い成績だと思いますが……」
「確かにそうね。でも……」
今ここにある『成績表』は個人に配られるもので、試験の順位と試験の点数の細かい内訳しか書かれていない。
つまり、前世でもらっていた様な成績表とは違い、この学校の成績は「全て試験によって決まる」と言っても過言ではない様だ。
思い返してみると、ゲームのイベントの中には「今って……授業中よね?」と目を疑うような描写もチラホラとあった。
それを考えると、こういう仕様にした方が何かと都合が良かったのだろう。
しかし、実はこの成績表では自分の順位は分かっても他の人の順位までは分からない。その上、この成績表が配られるのは長期休暇に入る前日だ。
だからこそ、みんな試験が終わった次の日に張り出される掲示を見に行くのだが……。
「でも、今回はちょっと危なかったのよね」
「そうだったのだですか?」
「ええ。もう少しでクローズ様に抜かれそうだったもの」
そう言うと、リアは「そうですか」と言ったのだが、その言葉がどことなく嬉しそうに聞こえる。
「……なんで嬉しそうなのよ」
アリアがそう尋ねると……。
「お嬢様は嬉しくないのですか? 随分と熱心に魔法のご指導をされていたのでてっきり……」
「……」
リアの言葉にアリアは思わず言葉に詰まる。
確かに、アリアも自分自身で分かるくらい熱心に魔法を教えたりメニューを考えたりしていた自覚はあった。
ただ、それでも……。
「――負けるのはやっぱり、嫌なのよね」
そう言うと、リアは「左様でございますか」となぜかかしこまって答える。
「……なんでそんなにかしこまるのよ」
「いえ、特に意味はございません。しかし、結果がそれほど良かったという事は、長期休暇明けには晴れて同じクラスというワケですね」
「そうなるわね。それに……」
「秋には魔法学校に入学して初めての学校行事がございますね」
リアが思い出したように言うと、ほぼ同じタイミングでアリアは「ええ」と答えながら授業終わりに配られた『星空会についての案内』と書かれた紙を手に取った。




