第三話
「じゃあ、今回の結果がもし悪かったとしたら……」
「相当言ってくる可能性は高いだろうね。前回の事もあるし。それに今やステファンは兄上の右腕みたいなモノだし、そもそもこの婚約を兄上が望んだモノじゃないという事も知っているからね」
「で、でもそれは……」
望まない婚約という点ではクローズも同じではないだろうか。
「兄上もクローズ嬢もお互いの状況から仕方のない事だって頭では分かっているとは思うけどね」
「……」
本来であればリチャード王子は魔法学校に入学した時点で『鑑定』の魔法が使える様になっていて、国王になる事は最早既定路線だった。
しかし、それはつまり「その魔法が使えたからこそ、ある程度の『自由』が許されていた」とも言える。
そしてそれは『恋愛』にも言えるだったのだろう。
結局『鑑定』の魔法が使えなくなってしまった事でたとえお互い望んでいなくとも、そうしないといけない様な状況が今である。
「ですが、そもそものきっかけは……」
「うん、ステファンの挑発だね」
それこそ最初は「ケンカなんて子供の頃はよくある話」だったのだろうが、さすがに事が大きすぎるが故に「子供のした事」とは言え、とんでもない。
「しかも、兄上と庶民の女子生徒との関係を知りながら自分も……というのがね」
「……」
本来なら「リチャード王子の右腕」と言うのであれば、婚約者ではない女子とあまり親密にならない様にするだろう。
それにも関わらず、黙認した上でしまいには自分も……というのだからもはや救い様がない。
キュリオス王子もそう思っているのか「はぁ」と終いにはため息をついていた。
「――殿下」
「ん?」
「正直。クローズ様の試験の件なのですが、私はどこか他人事の様に捉えていました」
「……実際、他人事だからね」
こうした事をサラリと言える辺りさすがキュリオス王子だ。しかし、今はそれにツッコミをしている場合ではない。
「――ですが、今の話や前回の試験の後の話。そして、昨日の話を聞いて考えを改めました」
「……へぇ?」
そう言うと、キュリオス王子は興味深そうな顔で続きを催促している様にも見える。
「今回。クローズ様には何としても上位のクラスに入ってもらおうと」
「……それって、ステファンに対する抗議……みたいなモノかな?」
王子は探る様にアリアに尋ねる。
「いえ。ただの私の自己満足です」
クローズは上位のクラスにも当然入りたいだろう。それはクローズの様子を見ていればよく分かる。
しかし、アリアが主人公に「クローズを上位のクラスに入れようとするな」と釘を刺されても今回クローズに手を貸そうと決めたのは……そんな大層な理由ではない。
ただ単純に……アリアはとにかくステファンにイラついていたのだ。
それはなぜか……それは多分。ステファンが自分のしでかした事を棚に上げてまるで「全てクローズを悪い」と言っている様にしか聞こえなかったからだろう。
リチャード王子がこうなってしまった本当の原因は……自分にあるというのに――。




