第二話
そこでキュリオス王子に聞いたところ――。
「……実は僕も詳しい話までは知らなくてね」
「え」
「とりあえず、今回の一件を不問にはしていないとは思う……くらいしか僕にも分からない。多分、お父様の事だから最終的な判断は宰相に任せた……とは思うけど」
「……」
もしかしたら宰相自身が息子の犯した罪をかぶって何らかの形で罰を受けたのかも知れない。ただ、それは公にはされずアリアたちが知らないというだけで……。
「正直。僕は宰相自身が罰を受けた可能性が高いと思っている」
「!」
ここでキュリオス王子がこう言った事でアリアと同意見だと分かった。
「な、なぜそう思われるのですか?」
「明確な理由があるワケじゃないけどね。単純に宰相が息子にかなり甘い事を知っているからね。それに『子供がした事の責任を取るのが親の務めだ』くらい言いそうだから」
「た、確かに」
「宰相もさすがに今は昔ほどではないにしても、甘いところは変わらないと思うよ。根っこの部分は変わらないってヤツかな。それに、そもそも問題は親というよりは――じゃないかな?」
「やはり、本人……という事ですか」
そう言うと、キュリオス王子は「そう」と頷く。
「いくら親が自分に甘くても自分自身の事ををしっかり見つめる事が出来れば一人の人として、一人前になれるはずだと僕は思っている」
「……その言い方ですと、その方は違うと言っている様に聞こえるのですが」
アリアがそう指摘すると、キュリオス王子は「まぁ、そうだね」とアッサリと見つめた。
「正直。彼は昔から人を力。つまり権力……。ここで言うところの成績で人を見るところがあってね。僕だったらいくら成績が良くても人として問題があったら……ちょっとどうかと思うのだけど」
「……そうですか」
キュリオス王子は立場上言葉を濁したが、アリアもその話を聞いた限りでは王子の意見に賛成だった。
「しかし……」
「ん?」
「いえ、ここ最近はお会いしていなかったのですか?」
アリアがそう言うと、王子は「あー、うん」となぜかアリアから顔を背ける。
「?」
何か言いにくい事でも聞いてしまったのだろうか。
第二王子ともなれば兄のリチャード王子ほどではないにしろ、顔位は合わせると思ったのだが……。
「あー、えーっと。見かける事はあったよ。王宮とかでね。この学校でも……うん、見かける事はあったかな」
「……なるほど」
つまり、見かける事はあっても自分から声をかける事はなかった……という事の様だ。
それを踏まえてると、どうやら王子はステファンが苦手の様だ。
「この学校の試験の結果ってさ、貼りだされるよね? 学年ごとに」
突然王子はそうアリアに話を切り出した。
「? はい、そうですね」
そのためか貼り出された結果を確認して一喜一憂する生徒が多数出てちょっとしたお祭り状態になる。
しかし、なぜ突然こんな事を言うのだろうか。
「実は……さ。その前回の試験で偶然クローズ嬢が僕の近くにいたのが見えたんだよ。その、自分の結果を見て呆然としているところに……ね。そしたらそんな彼女に近づく人影が見えた」
「……まさか」
この話の流れでアリアは何となく「誰かがクローズに話しかけに来た」と察し、何となくそれが「誰か」も分かった。
「――うん。それがステファンだったんだよ」
「……」
王子は「ご名答」と言わんばかりに頷きながら話を続ける。
「周りにたくさんの生徒がいたからね。それに、結構な賑わいになっていた上に場所も人目につきにくいところだったからアリアは気がつかなかっと思うけど……」
「……あの、それで彼はクローズ様に何と」
「内容までは聞こえなかったし、二人で話をした様には見えたけどすぐにクローズ嬢が走り去ってしまったから分からない」
「……」
しかし、今までの話の流れから何となくステファンにクローズが何を言われたのかは察しがつく。
多分「王子の婚約者なのにこんな体たらく」とでも言われたのだろう。そうでなければクローズが敵前逃亡の様な行動はしないはずだ。
「内容は分からなかったけれど、今も僕たちに話していないのだからきっと聞かれたくない話だろうと思ってね」
「……そうですね」
苦笑いを浮かべながらキュリオス王子に対し、アリアはステファンが自分が前世でゲームをプレイしていた時以上に「力」や「権力」という事に執着している事を知ったのだった。




