第五話
「……」
アリアはここで迷った。
別にここで「聞かない」という選択をしても特に問題はないだろう。いや、むしろその方がアリアの立場からしても安全かも知れない。
しかし――。
『本当なら、リチャード王子の魔法が覚醒していないとおかしいのに、その兆候すらないなんて』
そう言っていた主人公の言葉の意味も気になる。
そして、もし主人公の言っていた事が仮にも本当だとしたら……それにはきっと何か「理由」か「きっかけ」があるはずだ。
それがもし、この話の中にあるのだとしたら……それは聞きたい。
「……どうする?」
そうなると、答えはもう一つしかない。
「――聞きます」
「分かった」
アリアの答えを聞くと、王子は「フッ」と小さく笑う。それはまるで「アリアならそう言うと思ったよ」と言わんばかりのリアクションだ。
「……」
そんな二人の様子をクローズは見ていたが、特に何も言わない。
「まず、大きな前提としてこの国を治める国王は『ある魔法』が使えないといけないのだけど……」
「はい。確か『鑑定』ですよね?」
コレはゲームの知識云々関係なく授業で習うため、そこは問題ではないだろう。
「ただ、実はこの『鑑定』は王族と血縁があれば継承権の順位関係なく誰にでも使える可能性のあるモノなんだよ」
「……では――」
「陛下の弟君の息子である兄上……リチャードにもその可能性は十分にある……という事になるね」
そして、当初の読み通り……ゲームの設定通り。この、つまり幼少期の事故が起きた時は既にリチャード王子は簡単な物。つまり机など固形物を『鑑定』出来る様になっていたらしい。
「この魔法が使えるのは現国王と次期国王候補のみとなっていてね。貴族間の反発も考慮して発表は少し期間を置いてから……という事になっていたのだけど……」
「……」
話の流れから見て、この事故が大きく関係しているのは火を見るより明らかだろうが――。
「……意識を失って目を覚ましたら、リチャード王子は『鑑定』の魔法が使えなくなって……いたのよ」
クローズは小さく……小さく息を吐くように言った。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「……」
正直、アリアとしては驚きよりもどちらかと言うと「やっぱり」という気持ちの方が勝っていた。
なぜなら、その方が今までのゲームとは違う点と色々とつじつまが合うからだ。
しかし、そうなると大きな問題が浮上してくる。
「僕たちもこの事実を知った時は驚きを隠せなかったよ。ただ、それと同時に様々な問題もあった。でも、つくづくお父様たちは『公表しなくて良かった』って思ったのじゃないかな」
「……」
それは……そうかも知れない。確かに公表していたら……もっと大きな事態になっていたはずだ。
「ただ。そうなると『鑑定』の魔法を使える方が別のどこかにいるはず……とちまなこになって探したのですが……」
「……見つからなかったんですね」
アリアがそう言うと、二人は小さく頷いた。
「でも、見つからなくてもどうにかする方法はある。それが、事の発端になったクローズ令嬢を婚約者にするという事だったんだよ」
「え」
あまりに急展開過ぎると思ったが、実は過去には『鑑定』を使えない国王が国を治めていた事もあった……という事を魔法図書館にあった本来は王族しか利用出来ないところで見た書物で知っていた。
「実はコレが『鑑定』の魔法が使えない国王が国を治める方法の一つでね。その場合は魔力が多い人を妃にするというモノらしくてね。でもそれは魔法の扱いという話ではなくて、単純に魔力が多い人を……という意味で……だけどね」
それらを踏まえた上でクローズに白羽の矢が立ったのだろう……とアリアは推察したのだった。




