第一話
魔法上達への近道。それすなわち「精神の落ち着き」が最重要課題だとアリアは思っている。
でも、それはそもそも膨大な魔力を持っていたからこそ言える事であって、普通の場合は「魔力を増やす」というところから始めるらしい……と王宮で学んだ。
だから、既に魔力を持っていたアリアはキュリオス王子よりも先に「制御」の練習をしていた……のだが、実は「後から制御の練習に入った」王子よりも「元々持っていた」アリアの方が最初の練習の段階で躓いてしまった。
元々王子が器用という事もあったが、それ以上になかなか感覚がつかめなかったのだ。
今は何とか出来るようになったが、学校に入るまで実はあまりアリアは自信がなかった。
でも、それはきっと一緒に学んでいたのがキュリオス王子だったからだろう。
要するに比べる相手が「器用に何でもこなせてしまうため」に「普通」とか「世間一般的に」というのが分からなかったのだ。
そして実はこの二人が入学試験のワンツーでもキュリオス王子とアリアで、トップの成績で通過した王子はこの年の生徒代表で入学式の挨拶も行っている。
それで話を戻すと――。
「……」
アリアの視線の先には「当たれ!」と命令をしながらも的から随分と離れた魔法を繰り出すクローズの姿。
下手をすると目標よりも随分と遠く離れた場所にある隣の的の方が近いかも知れない。
「うーん。魔法の大きさ、威力は申し分ないけど……」
「距離感が全然つかめていませんね。途中までは真っすぐ目標まで飛んでいますが……」
アリアの発言に、王子も「うん、そうだね」と再度放たれた魔法を目で追いながら確認する。
基本的に実技の試験で見られるのは「魔法の制御」ではあるが、実際に使えなければ意味がない。
今は「的当て」を行って素晴らしいノーコンぶりを披露しているが、実は違う形式で魔法の実技を行った場合はなぜかクローズは指定された魔法よりも魔法を小さくしてしまう傾向があった。
つまり、その点だけで見ると……クローズは劣等生だったのだ。
「的当てになると他の項目は悪くないのですが……」
「的当てじゃなくなると今度は威力がガクッと落ちるみたいだね」
「はい。でも、それはきっと何か理由があっての事でしょうし、それが直れば……私も危ないです」
「何か理由か……」
王子は少し考え「まさか、あれか?」と小さく呟いた。
「どうかされましたか?」
「……いや? でも、もしそうなったら楽しそうだなって」
「?」
「ほら、クローズ令嬢が魔法を使える様になったら自分が危ないって話」
「……そうでうすね」
正直。アリアの中でキュリオス王子はゲームとは完全に別人だと思っている。
ゲームの中の王子はどことこなく冷めていて未来すら諦めている様に思えた。そんな小さい頃に出会った主人公と再会を果たして少しづつ未来に希望を持つ様になるのだが……。
それでもこんなに人なつっこい笑顔の絶えない「少年」の様な感じではなかったはずだ。
「……」
でも、もしかしたらコレが本来の彼の姿なのかも知れない。
そういえば、クローズも「小さい頃はいつもつまらなさそうな顔をしていた」と言っていた。
もし、そんな彼がアリアと出会た事で変わったのだとしたら……アリアはほんの少しだけ嬉しい気持ちになった。




