第三話
「……」
時刻はちょうどお昼を食べ終わって少し過ぎた頃。
いつもであればキュリオス王子と行動を共にしているのだが、今日に限って王子は教師に呼び出されていた。
もしいたら王子もこの魔法に巻き込まれていただろう。
何せかの魔法はある程度距離を空けないと近くの人も巻き込んでしまう魔法だからだ。
それにしても……この問い方。相手は明らかにアリアを転生者と踏んでいるらしい。
「……どちら様でしょう?」
ただここで「はいそうです」と答える必要はない。そもそも、彼女とアリアは初対面の先輩と後輩という立場だ。
高圧的な彼女の聞き方より、アリアの聞き方の方が丁寧だ。
しかし、どうやらこの聞き方が良くなかったらしい。
よそよそしいアリアに対し、主人公はしびれを切らしたかの様に「チッ」と軽く舌打ちをした。
「……」
前世でもそうだったが、この世界でも「舌打ち」は下品な行動の一つとされている。一応、学校内で身分は関係ないとは言っても初対面の相手に対して舌打ちはどうだろうか。
「ハッ! しらばっくれちゃって。あんたが転生者じゃなかったらどうしてキュリオス様と『友人』なんて立場になれるのよ。それに、転生者じゃなかったらあんたみたいな『モブ』が試験で二位なんて取れるはずがないでしょう?」
「……」
――なるほど、やっぱりそうか。
どうやら彼女はそれらを踏まえてアリアを「転生者」と断定したらしい。
でもまぁ、主人公もアリアと同じ転生者の様だからその可能性を考えても不思議ではない……か。
そもそもアリアの存在の方が「イレギュラー」だ。
「はぁ。あんたのせいでキュリオス様になかなかお近づきになれないし、プレゼントを渡そうとしてものらりくらりとかわされるし。全く、あんたのせいでこっちの計画が狂ったわ」
「……」
彼女は一人でブツブツと話しているが、その内容を要約すると……多分。彼女はゲームでは存在していない『ハーレムエンド』をしようとしているのだろう。
しかも短期間で。
そんな最中に「陛下にも認められたキュリオス王子の友人」というアリアが現れた。
ただの男爵令嬢であれば特に彼女の計画に問題はなかっただろう。しかし、アリアは「陛下にも認められた存在」だったからこそ、彼女もうかつに手を出せなかった。
「……?」
そこでアリアはふと疑問に思った。
それならばなぜ彼女は「今」出てきたのだろうか。確かゲームでは『悪役令嬢』であるクローズの断罪イベントがあるのは卒業式だったはずだが――。
「はぁ、しかも本来なら私をイジメるはずの『悪役令嬢』にまで手を加えて変えようとするんだもん。全く『モブ』の分際でねぇ?」
そこまで言われてアリアはハッとして思い出した。
「……」
それは「クローズは学校を卒業するまで一度も上位のクラスに上がれなかった」という事を……。




