第二話
――こうして、放課後にクローズの魔法実技の試験対策をキュリオス王子も一緒に行う事になった。
でも、正直なところ。実は今のアリアは『呪文』なしで試験を突破出来るだけの実力を持っているらしい。
それも三年生レベルの試験を……だ。
ただ、あくまで「らしい」で話が止まっているのはそれを言ったのが幼少期に王子と共に学んでいた魔法の家庭教師だけだったからである。
もちろん「王宮専属」という事もあり実力も申し分ないのだが、何せアリアは『先祖返り』だ。
それを踏まえて考えると……アリアはそう言われても実はあまり素直に喜べなかった。
「……」
でも、不本意であれその力はアリアが持って生まれたものである事に違いないし、否定をするつもりもない。
ただ、周囲の目を誤魔化す様に本来は必要のない『呪文』を唱えているが、正直アリアにとって何も意味がない。
心底良かったと思うのは「呪文の必要のない人が『呪文』を唱えて魔法を使っても特に影響がない」という事だ。
そして、アリアがこの膨大な魔力を持っていても「化け物」など言われて周囲から孤立をしなかったのはきっと……試験で彼女よりも上にいるキュリオス王子の存在があったからだろう。
でも、それは多分。アリアが想像も出来ない様な努力をして来たからに違いない。
それが分からない程、アリアも自分の持っている魔力を過小評価はしていない。
ただ、だからこそ「友人であり、ライバル」とも言える存在がいる事で特に不自由なく学校生活を送れているワケなのだが……。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ここでの懸念はやはり主人公の『ソフィリア・クロイツェフ』の存在だ。
キュリオス王子の話を聞く限り、彼女の出現により元々いた攻略キャラクターたちの婚約者たちはクローズを除いて全員自分たちの家が管轄している領地に「療養」という形で帰ってしまったらしい。
しかし、あろう事か攻略キャラクターたちはそれを家には言っていない可能性が高いと言う。
完全に恋にのぼせて忘れてしまっているのか、はたまた「家にバレるとまずい」という事くらいは分かっているのかまではキュリオス王子にも分からないらしい。
何せ王子にとっては彼らは学校の先輩であり、面識こそはあってもそこまで親しいというワケではない。
よってそこまで何かをする義理もないとの事だ。
ただ、彼らがいくら隠そうがいずれは彼らの親の耳に届くだろう。
しかも、王子曰く攻略キャラクター全員に年の近い弟がいるらしく、各家庭に最終的な判断はゆだねられるだろうが、多分。彼らに家の継承権が移るだろうとも言っていた。
「ふぅ……」
どうやらこの世界では「一人っ子」というのは相当珍しい存在の様だ。
「!」
そんな時、ふと視線を感じて振り返ったが……。
「なっ、何。今の……」
そこには誰も……何もない。しかし、なぜか不気味な感覚がアリアを包んでいた――。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
その時は「ただの勘違い」だと思った。
でも、そうじゃなかった。それが分かったのは「自分の周囲に誰もいない」と気が付いた時だ。
「……」
コレは多分「人払いの魔法」だという事はこの状況から分かった。
この「人払いの魔法」は持続時間が短いという欠点があるが、難易度としては比較的簡単な部類に入る風魔法の一つだ。
それにしても「一体誰がこんな事を……」と辺りを見渡していると……。
「あなた。転生者?」
唐突に一人の女子生徒が……いや、アリアはその人物に見覚えがあった。
しかも、前世で自分は彼女になってこの世界を謳歌していたのだから見覚えがあって当然だ。
「……」
そう、アリアに声をかけてきたのは……この世界を舞台にしたゲームの主人公だった。




