第一話
そうこうしている内にあっという間に月日は流れ――。
「あ、暑い……ですね」
季節は『夏』を迎えていた。
「そうだね。さすがにこうも暑いと外にもいづらいね」
校舎内は比較的涼しい方で、二人がいるのは教室だが、移動する時に外に出るとかなり暑い。
「そういえば、この暑さのせいなのか夏は盗みなどが少ないらしいよ」
「そうなんですか。それは――」
「うん。でもその代わりに変な人が増える傾向にあるらしいけど」
アリアは「良かったですね」と言おうとしたが、王子の言葉を受けて「――ダメですね」と続けた。
王子の言う「変な人」と言うのはいわゆる「変態」と言う名の露出狂だろう。
コレもれっきとした「犯罪」と言えば「犯罪」ではあるが、盗みなどとはずいぶんと傾向が違う。
まぁ、季節によって増える「犯罪」が違うという事なのだろう。
「あ、そういえばさ」
「はい」
「今回のテスト。クローズ令嬢、かなり気合が入っているらしいね」
「そう……らしいですね」
実はこの学校では年に四回試験が行われており、その内偶数回目はクラス分けの試験も兼ねて行われる。
それ故にちょうど下位と上位の中間くらいにいる生徒は死に物狂いで勉強に励む……らしい。
実はこの時期にアリアはお兄様を訪ねており、その時にこのあまりにも殺気立っている状況を知った。
そして、それは現在下位クラスにいるクローズにも同じ事が言え、ここ最近は授業で分からないところなどを積極的に聞きに行っている様だ。
「でも、クローズ令嬢の課題って筆記よりも……」
「……」
キュリオス王子の言葉にアリアはピタリと固まった。
そう、クローズの最大の課題は「実技試験」の方である。
クローズ本人も分からない程その魔法は制御も威力も申し分ないにも関わらず、とにかくノーコン。つまり、コントロールが超が付くほど下手なのだ。
「他は全然問題ないからこそ……」
「……」
そのノーコンぶりが目立ってしまう。そもそも自分の魔法がコントロール出来ないのは大問題だ。
「それで? 今日の放課後に練習するんだよね?」
「はい。練習場所の確保はクローズ様が行ってくださったそうですので」
アリアがそう言うと、キュリオス王子は「ふーん」と何か言いたそうにアリアをジーッと見つめる。
「……何か」
「それってさ。僕も参加しちゃダメかな?」
「え」
「ほ、ほら! 教えられる人は多い方が良いかなって!」
「……」
なぜか一生懸命に訴える王子に少し疑問を抱きつつ「確かに、一理ある」と思い、アリアは納得した。
それに、実はアリアは元々の魔力が膨大なためかどことなく感覚で魔法を使ってしまう傾向が強く、あまり人に教えるのが上手くない。
「そうですね。では……」
「い、いいの?」
「確かに殿下の言う事も一理あると思いましたので」
そう言うと、王子は「ありがとう!」となぜかものすごく嬉しそうに笑う。
「……」
そこでアリアは「ひょっとしたら殿下はそれを察してくれたのかも知れない」とキュリオス王子の提案を受ける事にしたのだった。




