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モブ令嬢にそんな『魔力』はいりません!  作者: 黒い猫
第十四章 食堂にて
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第五話


「おや、誰か来たね」

「?」


 どうやら運動場にいるライアスの元に誰か来たらしい。


「……」

「うーん。ちょっと……見にくいかな」


 しかし、それが誰なのかちょうど木が邪魔をしてその姿がよく見えない。でも、アリアは何となく……本当に何となくだが、それが誰なのか分かっていた。


「……」


 なぜならアリアは今。前世でプレイしていたゲームの世界を生きている。


 たまにそのゲームの設定と違う話があった。知らない設定とも言えるモノが出てくる事もあるが、こういった時の勘は意外と……いや、多分当たっていると思う。


 あそこでライアスと仲良さそうに話している相手が……このゲームの世界では主人公である『ソフィリア・クロイツェフ』であるという事を。


◆   ◆   ◆   ◆   ◆


「……」

「お、見えた」


 ちょうど強い風が吹いたらしく、どうやら一瞬だけ王子の角度からは顔が見えたらしい。


「……見えましたか」

「ちょっとだけね。一瞬だったけど顔も見えた」

「そうですか」

「うん。だけど……」


 そこまで言うと王子は少し考え込む様な仕草をする。


「どうされましたか?」

「うん? いや、今見えたのは女子生徒だったのは分かるし、ライアスの反応とさっきのアリアの話を鑑みて考えると……あそこにいるのは多分。件の次期生徒会の人たちを陥落した女子生徒だと思う」


 キュリオス王子がそう断言するくらいライアスの反応は分かりやすかった。


「でも……」

「でも?」

「正直、兄上たちが陥落されるほどの魅力を感じなかったなって」

「……」


 王子はとても素直だ。


 しかし、それは元々の設定ではない。もっと言うと、口調も全然違う上にそれこそこんな……少年の様な感じとはむしろ真逆だったはずだ。


 ただ、実はアリアのいないところではゲームと同じ様な「クール」な感じなのだが……それをアリアはあまり知らない。


 たまに「外向き用の顔」をしているのは知っているが、あまりにも自分に見せる顔と違い過ぎるため、いつも「いつ化けの皮が剥がれるのか心配」と思っているくらいだ。


 まぁ、その辺り。キュリオス王子は抜け目ないのだが。


「うーん。兄上は一体あの女子生徒のどこを気に入ったのかな?」

「……ひたむきなところなど内面ではありませんか?」

「そうかな? 成績はギリギリで周りの生徒は『なんで彼女が?』って言われるくらいらしいよ」

「庶民の出という事を考えれば十分すごい事では?」


 アリアがそう言うと、王子も「まぁ、庶民の生徒の中では一番の成績みたいだから、それも加味されて……って事になるのかな」と言いつつ、あまり納得はしていない様だ。


「でも、僕としては学校支給の杖やホウキを使っている人たちが一位と二位を取っている方がすごいと思うけどね?」

「……」


 サラリと自分を入れている辺りキュリオス王子らしい。


「ですが、彼女は珍しい魔法が使えると……」

「ああ、光魔法の事だね。でも、それ以上にアリアの方が……じゃないかな?」


「……」

「……」


 ニッコリと笑う王子に、アリアは思わずため息をつきたくなった。まぁ、王子を目の前にしなかったが。


「僕としてはアリアと彼女では全然比べられないよ」

「それは……私が友人だから……という事でしょうか」


 アリアがそう尋ねると……キュリオス王子は珍しく驚きの表情を見せた後――。


「……そうだね」


 そう言って笑った。


「……そうですか」


 ただ、その王子の笑顔はどこか寂しそうで……いつもなら「友人として」と言われて王子との関係が進んでいない事にホッとするのに、この時はなぜか……。


「?」


 アリアは不思議と胸が少し苦しくなった――。

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