第四話
「――ごめん」
そんな中、キュリオス王子は唐突に謝って来た。
「え」
「今のは僕が悪かった」
「そっ、そんな。いけません、そもそも私が――」
アリアは慌ててそう言おうとすると……。
「いや。コレは僕の器量の問題だよ」
王子はそう言って苦笑いをしつつ「はぁ」と深いため息をついた。
器量……アリアは最初、この聞きなじみのない言葉にあまりピンときていなかったが、どうやら「器の大きさの事」を言っているらしいとすぐに気が付いた。
「これじゃあお母様に呆れられちゃうな」
何気なく王子の言った言葉にアリアは「どうしてここで王妃様が出てくるのだろう?」と思わず首をかしげる。
「ああ、アリアは気にしなくていいよ。こっちの話だから」
「そ、そうですか」
どうやら王子にも「事情」というモノがあるらしい。
「それにしても……何かライアスに気になる事でもあったのかい?」
「え」
「話を蒸し返す様で悪いけど、やっぱり気になってね」
「……きっ、気になる事……と言いますか。その、ライアス様は次期生徒会の方だと小耳に挟んでいましたので……それでちょっと」
アリアがそこまで言うと、王子も察してくれたのか「ああ」と頷く。
「まぁ、そうだね。なるほど。確かにそうだったね」
王子も「そういえば……そうだったね」と言わんばかりに頷く。
「あの」
「ん? 何?」
「た、確かライアス様には婚約者がいらっしゃると聞いた事があるのですが……」
「ああ、その話か――」
確か、ゲーム上では詳しい説明も……いや、それどころか名前すらなく説明書や設定資料集で「攻略キャラクターには全員婚約者がいる」としか書かれていなかった。
だから、会った事がないどころかどういった人なのかも全然分からない。
ただ言えるのは「クローズと同じように『悪役令嬢』になる可能性があるにも関わらず詳しく描かれなかった」というところだ。
少なくとも、アリアよりも彼女たち「攻略キャラクターの婚約者」の方がそうなってしまう可能性は高くあるというのに……。
「確かに次期生徒会のメンバーには全員婚約者がいたよ。まぁ、兄上の婚約者。クローズ令嬢以外の令嬢たちは……自分たちの領に帰ってしまったけど」
「え……」
キュリオス王子の言葉に、アリアは思わず固まった。
「正確には実家が所持している領地に……っていえば分かりやすいかな」
「そ、それじゃあ」
「うん。彼だけじゃなくて彼も含めた次の生徒会のメンバー。兄上以外の婚約者以外全員。領に戻って学校に来ていないね」
「……」
それならば『悪役令嬢』になる事はほぼ不可能だ。そして、その事によってクローズだけが『悪役令嬢』になったという事にも説明が付く。
しかし……。
今までは「何となく」のイメージでしかなかった主人公の行動の影響をこの時ばかりは思い知った。
でも、元々はその行動を自分がゲームをプレイしていた時は何気なく「普通」のつもりでしていた事を思い出し、まさかこんな形で現実に影響が出ていたのかと思うと……アリアはこの「事実」に思わず絶句するしかなかった。




