第三話
ゲームの中でいつも『イベント』が起きるときは何かしらの前兆……つまり、前触れなモノがあった。
それは例えば「学校行事」や「試験」などが分かりやすいモノとして挙げられるだろう。そして、もしそういったモノがなかったとしても、何かしらの『イベント』が起きるときは決まって……。
キャラクターがいつもと違う動きをしている。
ただ、現実的な話をしてしまうと、それ自体は何にもおかしな話ではない。むしろ毎日毎日同じ行動をしている方がおかしいのだ。
それを踏まえて考えると、本当なら何も不安に感じる必要はないのかも知れない。
アリアだって普通に生活しているはずなのに気が付いたら王子の友人になっていた。しかも、コレはゲームには一切関係のない話だ。
いや、そもそもアリアは顔なしののっぺらぼうで終わらされてしまうか、もしくは真っ黒シルエット……。下手をすれば名前すら表示されない「モブ令嬢」だ。
そんな彼女がこんな立ち位置にいるのだから……もう本当に「この世界はゲームの世界を模しただけの別物」と考えた方が良いのかも知れない。
「……」
「彼が気になる?」
無言のまま彼を見ていた……いや、正確には「視界に彼を映していたモノの、頭では全く違う事を考えていた」だけなのだが……。
「いえ」
「ふーん?」
どうやらキュリオス王子にはアリアが騎士団長の息子かつ、攻略キャラクターであるライアスに熱視線を向けていた様に見えたらしい。
「何か」
「うーん。僕には随分熱心に見ていた様に見えたんだけどなぁ?」
「……」
そう言う王子の言葉の端に何やら若干のトゲの様なモノを感じたアリアは内心「どうしよう」と焦った。
本当にアリアとしてはライアスはあくまで「攻略キャラクターの一人」という認識で、アリアがゲーム中に知っているライアスの行動パターンとは違う行動をしている彼に疑問を持っただけなのだ。
しかし、それでまさか勘違いをされてしまうとは……。
でも、コレは「そんな事はありません」とハッキリと言っても、きっと今の王子には全然響かないだろう。
だからと言ってこのまま無言のままでいるのは……多分もっと状況を悪くさせるだけに違いない。
「……」
じゃあこういった時……どういう対処をするのが正解なのだろうか。
アリアは前世で男性との交際経験はない。しかし、その分乙女ゲームに時間を費やした。
しかし、前世であれだけ乙女ゲームにのめり込んだにも関わらず……それこそこのゲームも寝る間を惜しんでやり込んでも、そこで培った知識はどうやらこういった時には一切役に立たない様だ。
「……」
正直、本当にどうしていいか分からないアリアの脳内は……冷静な表情とは裏腹に何とかしようとフル回転状態だった。




