第二話
「――そっか。やっぱり」
「な、なぜそう……」
アリアが「思われたのですか?」と言う前にキュリオス王子は「分かるよ」と優しく笑う。
「昨日の事を思い返したらね。アリアならきっと気にかけるだろうなって」
「……」
しかし、彼女に会ったのはあくまで偶然である。
「僕としては二人が仲良くなるのは良い事だと思う。兄上の婚約者だし、昔から知っているし」
「そう思われるのであればなぜ……殿下はクローズ様を私に会わせない様にしていたのですか?」
「ああ。それは……アリアが逃げてしまうのではないかなって思っていたから。僕と『友人』になってからはタイミングが合わなかったけど『友人』の件が保留になっていた時は……実は何度かタイミングがあった」
「……」
アリアが逃げてしまう……という懸念の件は特に否定するつもりはない。
あの時のアリアはとにかく王子と関わりを持たない様にしようとしていた。まぁ、今は「国王陛下」と「王妃陛下」というバックがついているから多少は周りの目を気にしなくても良くなったが……。
ただ「自分の娘が王子の友人である」という事をアリアの両親は大っぴらに言う事が出来ない。
そういう約束を陛下が取り付けてくれ、もし破ろうモノならすぐさま当主をお兄様に変更する手はずになっている。
でも、実はこの当主交代の話は案外すぐに行われるのだが……それはまた別の機会にしよう。
「?」
アリアがふと外を見ると、そこにはいかにもスポーツが出来そうな男性がいた。あれは確か……。
「ああ。ライアスだね」
「……」
アリアは思わず「やっぱり!」と大きな声で言いたくなったが、グッとその言葉を飲み込んだ。
ゲームでならともかく、転生してから彼を見るのは初めて……という事になっている。ここでおかしな反応をして勘付かれてはたまらない。
「お、お知り合いですか?」
「ん? ああ。兄上の友人で同級生。魔法騎士団長の息子だよ」
サラリと答える王子にアリアは「な、なるほど」と答える。
「なるほどって……アリアも一度会っているはずだけど?」
「!」
コレにはアリアも驚いた。まさか会っていたとは……。
「ああでも、入学試験の真っ最中だったから挨拶は出来なかったけど」
「それは……どういう……」
「あー。入学試験の手伝いでいたから」
そう言われてアリアは納得した。
それならば声をかけたくてもかけられないだろう。まぁ、向こうも同じだったとは思うが。
「それにしても、珍しいな」
「え」
「いつもなら生徒会室にいるから」
「……」
ふと口にした王子の疑問に、アリアは一瞬不安になった。
なぜなら「いつもと違う事をしている」という事は……それは何か『イベント』が起きる前兆だとアリアは知っていたから――。




