第三話
「……」
正直、この世界の『貴族』という立場になったからこそ分かった事がある。
それは「人を簡単に信じてはいけない」という事だ。
コレはキュリオス王子や王妃様から言われている事でもある。
そもそも、貴族の階級の中でも下である男爵家のアリアに近づいて来る人間なんて本来はそういないはずなのだ。
そうなると、必然的に近づいて来る人間は「王子とお近づきになりたい」という事になる。
そして、そんな人たち程「あわよくば……」なんて魂胆すら透けて見える事がある。
魔法学校に入学したての一時は「お茶会」とは名ばかりの誘いを受ける事も多かったが、ある日を境にパタリとなくなった。
あれは……久しぶりに王宮で王子とお茶をした日だったと思うが、その時に確か「最近困っている事はないかな?」と聞かれたのを覚えている。
ただ、肝心な「その時になんと答えたのか」という事をアリアは覚えていない。
しかし、その日を境に誘いがなくなったのだから……きっとそれに関連した事を言ったのだろう。
「……」
結局のところ言えるのは「そういった人たちを信頼出来るのか」という事だ。
そして、アリアの答えは「NO」で、ゲームの中でも婚約破棄を告げられたクローズの周りには……いや、それどころか横にも誰もいなかった。
ゲームの序盤ではたくさんの取り巻きの令嬢たちがいたのにも関わらずだ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「――私はお嬢様のなさりたい様にすればいいと思います」
無言のまま下を向いていたアリアに優しい声が届く。
「ぇ……」
思わずそう言いながら顔を上げると、そこには穏やかな表情のリア。
「……」
知らなかった。リアがこんな穏やかな表情が出来たなんて……。
「――練習致しました」
照れくさそうにリアは言う。
「な、なんで……」
「私も……変わろうと思いまして」
「……」
「お嬢様が日々努力されている姿を見ている内にそう思いました」
「それで……」
「コレでお嬢様を元気づけられるとは思っておりませんが……」
そう言うリアに、アリアは「ううん」と首を左右に振ってそれを否定する。
「元気になったよ。ありがとう」
「――恐縮です。ですがお嬢様」
「うん?」
「以前も言いましたが、私はいつでもお嬢様の味方です。時には無礼を承知で意見を言う事もありますが……」
「無礼だなんて……むしろありがたいよ。私も人間だから、迷う事も間違う事もあるのだから。でも……そうだね。うん」
そこでアリアは考えた。
まずは「今の」クローズをもっと知る事が必要だと。そのためには他愛もない話からして、それから「今の事」を……ちゃんと考えなくてはいけないと――。




