第二話
「――つまり、お嬢様としては『いつかお友達になれたらいいな』とは思っていたモノの、今日会ったばかりに言われて困惑している……という事ですか?」
リアの尋ね方がまるで注意事項を確認しているかの様な感じで少し笑いそうになりながらも、アリアは「ええ」と答える。
「正直。今日は顔を覚えてもらえるだけで良かったの。いいえ、むしろそれだけで良かった」
「お相手のクローズ様は公爵家。お嬢様は男爵家」
「会ってその日一日で『友達になりました!』は私には……ちょっと」
コレが階級制度のない前世であれば話は違っただろう。
しかし、この世界で生きている以上。この世界のルールには従わなければならない。
「……そうでしょうか?」
「え」
意外な回答にアリアは思わず聞き返した。
「クローズ様とお嬢様が今まで全く面識がなかった事を知っていらっしゃるのはごく一部の方々のみ。お嬢様はキュリオス殿下のご友人という事とクローズ様がリチャード殿下の婚約者という事はむしろ周知の事実であり、むしろ王宮で面識があると思われるのが自然な流れかと」
「それは……」
確かに言われてみるとそうかも知れない。
「そこからご友人の関係になったと思われても何らおかしな話ではないでしょうか?」
「……そうね」
しかし、学校に入学してしばらく経ってしまっている。
入学当初から仲良くしていれば、周囲もそう思ってくれた可能性は高いだろう。だが、既にある程度時間が経過している今は……逆に違和感を覚えるのではないだろうか。
それに……。
「私と仲が良いが故に変な噂とか勘繰りをされるかも知れないと思うと……」
アリアはそれをキュリオス王子の時に体験しているため、想像するだけで気が滅入ってしまっていた。
「それは……そうですね」
「殿下本人が『彼女は私だけでなく陛下もお認めになった大事な友人だ』と言った今でも陰でボソボソと言われているからね」
下手をすると「陛下も認めた息子の友人に対して不敬を働いた」として何かしらの罰則になりねない行動だ。
しかし、アリアがこの事を王子たちに言わないのは、ただ単純にそういった人たちを相手にするだけ面倒だと思っているからである。
「――結局。何をどうしても陰で色々と言われるモノだってあの時知ったわ」
ゲームをプレイしていた時は字幕で流し読みしていただけで済んでいたが、実際にそういった事を耳にすると……あまり良い気はしないモノだ。
「――ですが、クローズ様も同じように『私の友人』と言ってくださるのでは?」
「……」
確かに、今日のクローズを見た感じではキュリオス王子と同じ様な対応をしてくれそうではあった。
「お嬢様の中では……まだ懸念なさっている事があるのですね」
「……そうね」
まるで「アリアの考えている事なんてお見通し」と言わんばかりのリアに、アリアは思わず視線を下に向けた。
なぜなら、リアの指摘は図星だったからである。
正直、アリアの中ではやはりクローズはゲームの『悪役令嬢』という印象が払拭出来ていない。
もちろん、頭では「同じ顔だけどゲームとは違う」という事は理解出来ている。それでもやはり心のどこかではまだ「信じていいのだろうか」という迷いが残っていたのである――。




