第一話
――こうして、アリアとクローズは無事に友人になりました……なんて簡単に行く話ではなかった。
正直、クローズがまさか自分からそんな事を言って来るとも思っていなかったアリアにとってはものすごく驚いた。
何せ、アリアは言ってしまえばクローズにとって恋敵の様なモノだ。そんなアリアに対して「友人になろう」と言ってきたのは……。
「ただの気まぐれ……だったのかしら」
アリアはボーッとしながら小さく呟くと……。
「どうかされましたか」
突然リアがなぜか紅茶とティーカップのセットを持って現れた。
「いや、あなたがどうしたのよ」
夕食の後、片づけをしに姿を消したと思ったら唐突にお茶のセットを持って現れたら、こうも言いたくなる。
「帰られてから勉強もせずにずっと悩まれていた様子でしたので……」
「え、そんなに悩んでいたかしら?」
そう言うと、リアは無言で頷く。
確かに、いつも帰ってきたらアリアはすぐに机に向かって予習と復習をする。
そして、それが終わったら一日の振り返りをし、今がゲームの中で言う「いつ頃」なのかを考え、そこから様々な可能性を模索している。
ちょうど学校で今習っているところは小さい頃に既に学び終わっているけれど、教師によっては様々な豆知識を挟んだり意外と抜けていたり、ここ数年で新たに分かった事などもあり、面白い。
実技の方は……アリアの場合はとにかく心を落ち着かせる事が人よりも重要なだけに、寝る前はいつも精神を落ち着かせてから寝ている。
コレをするのとしないのとでは次の日に「大きな違い」となって出てくるのだ。
そもそも、普通の人ならここまでする必要はないだろう。しかし、アリアの場合は下手をしたらちょっとした事でも大惨事になりかねない。
それくらいの魔力を持っているし、下手をすると「あいつ、おかしい」と思われる可能性もある。
そこから変な噂が立ってしまっては、それこそキュリオス王子や陛下。王妃様にも迷惑をかける事になりかねない。
ひょっとしたら、その話が主人公に入ってしまうかも知れない。
とにもかくにも今はまだその時期ではない。いや、この話は「手をかざすだけで説明文が読める事」も含めて出来れば墓場まで持って行きたいくらいの『秘密』だ。
そんな日ごろから入念な準備をしているアリアが帰ってから「何もしていない」という事自体。リアの目には不自然に映ったのだろう。
「……」
つまり、このお茶のセットはリアなりの気遣いだという事に気が付かない程、アリアも付き合いが短いわけではない。
「リア、ありがとう」
「いえ。私が勝手に準備しただけですので」
ぶっきらぼうに聞こえるかも知れないが、コレも彼女の優しさだ。
「――せっかく用意してくれた事だし、お茶をしながら話。聞いてくれる?」
そう尋ねると……。
「私でよろしければ」
なんて言いつつ、リアはどことなく嬉しそうにお茶をティーカップへと注いだ。




