第五話
コレはチャンスだ。
今のリチャード王子の態度の変化を「次期生徒会の仕事で忙しい」という事にすれば納得してくれる可能性が高い。
いや、そもそもリチャード王子がそう説明しておいてくれればクローズもここまで暗い表情になる事もないのだが……。
ひょっとしたら、リチャード王子はそこまで気を回すつもりすらないのだろうか。
でもまぁ、どちらにしても「生徒会の仕事」は二年生になってから始まった事である事には違いない。
だからクローズがこの話を納得さえしてくれれば主人公の存在を知られずに済み、またクローズを守る対抗策を立てられる。
もちろん「でっち上げ」をされてしまう可能性も否定が出来ないが、それと同時に何か証拠を掴んだ国王陛下から何かしらのお達しがある……という可能性もある。
要するに「まだどちらに転ぶか分からない」という状態である事には違いない。
「ひょ、ひょっとしたら……生徒会のお仕事が大変なのかも知れませんね」
「そう……かも知れないわね」
「はい。生徒会はいわば学校の代表になります。今はちょうどその引継ぎをしている最中だと……。二年の中頃には本格始動になりますので」
「そう……よね。いくらリチャード様でも……いきなりは無理よね」
正直、ゲームの中では生徒会の活動内容などはただの文章でしか説明がなかったため、詳細は全然分からない。
ただ、国内唯一の魔法学校の生徒会だ。さぞ忙しいに違いない……という事にしておこう。
「――私の心配のしすぎね」
「そうですよ」
なんて言いつつ、アリアの心中は……実はかなり複雑だった――。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
色々と話をしている内にあっという間に日が落ちそうになっていた。
「もうこんな時間なのね」
「そう……ですね」
少々予定とは違ったが、こうしてクローズと話す事が出来て良かったとアリアはホッと胸をなでおろす。
しかし、こうして実際に話してみて分かったが、ゲームをしていた時と今の状況が違うとは言え、彼女が『悪役令嬢』とは正直考えにくかった。
『恋は盲目。人を変える』
良い意味でも悪い意味でもアリアの前世で言われていた言葉ではあるが、今のクローズを見ている限り、どうにも当てはまらない。
ここはやはり彼女の周りにいた令嬢たちの暴走によってクローズが『悪役令嬢』に仕立て上げられた……と考えてほぼ間違いないだろう。
そうなると、その状況にならない様にするにはクローズをその令嬢たちから切り離す……という事になるのだが。
「……」
正直、あまり良い案が浮かばない。
何せクローズの周りにいる令嬢たちはいわゆる「取り巻き」とは言え、アリアより階級が上だ。
有効な方法はクローズ本人が彼女たち「取り巻き」を拒むような行動を起こさないといけないのだが……。
「……ねぇ」
「はい」
「あなた……私と友達にならない?」
「あ、はい……え?」
正直、コレが一番手っ取り早いとは思っていた。
しかし、アリア自身「自分よりも階級が上の彼女たちを差し置く様な行動をするのは難しいだろう」と思っていた。
だからまさか、クローズ本人からこの事をサラリと言われてしまい、アリアは思わず聞き返してしまった。




