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モブ令嬢にそんな『魔力』はいりません!  作者: 黒い猫
第十二章 中庭にて
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第四話


 ありえない……という話ではない。


 いや、もちろん「彼女が関わったモノが一切関係ないか」と聞かれると、その答えはきっと「NO」だろう。確かに婚約前にクローズは自分から身を引いている。


 それを踏まえて考えると、ゲームの中の主人公とアリアではそもそもの状況が違う。


 しかも、主人公は既に婚約している二人の間に割って入っている様な形だ。先ほどのクローズの話から察するに、クローズは幼少の頃からキュリオス王子の事が好きだった様だ。


 それならば奪われない様にするのも当然と言えば当然の流れではあるのだが――。


 仮にそうだったとして、なぜゲーム中にシルエットの令嬢たちが度々出て来たのだろうか。


 ゲームをプレイしていた時はその令嬢たちが「クローズ様のため」だの口にしていたが、本当にそうだったのだろうか。


「……」


 実は彼女たちが主人公に嫌がらせをしたかっただけではないのだろうか……そんな考えが頭の中で渦巻く。


「あなた……大丈夫? 顔が真っ青よ?」


 そうアリアを気遣う姿に『悪役令嬢』の姿は見えない。


「だ、大丈夫です。それよりあの……」

「何かしら?」

「では、どうしてリチャード殿下とご婚約されたのですか?」

「……」


 アリアの問いに、クローズは一瞬驚いたような表情を見せた。それは多分、誰にも聞かれた事がなかったからだろう。


 クローズはキュリオス王子に対する自分の気持ちをひた隠しにしていた様だから。


「公爵家の令嬢として当然の流れだったから……かしら」

「王家に嫁がれる事が……ですか?」


 そう尋ねると、クローズは「ええ」と頷く。


「それは私が公爵家で生まれた時からの定め……だから」

「……」


 でもきっと、クローズの本心としてはキュリオス王子と婚約を結びたかったのではないだろうか。


「――気にしないで。さっきも言ったと思うけど、私は彼が楽しそうに笑っているのを見られるだけで良いと思っているのよ。それに、私自身が決めて納得しているのだから」

「……」


 だから……なのか、どうにもクローズの穏やかな笑顔を見えていると心が落ち着かない。


「それに、リチャード様の新たな一面などを知る事が出来て良かったと思っているの。何せ彼との面識はほとんどなかったから」

「そうだったんですね」


 何でもリチャード王子は勉強の時などいつもどこかにすぐ行ってしまい、家庭教師や使用人たちも手を焼くほど脱走の名人だったらしい。


「……」


 しかし、アリアはその話を聞いてすぐに「実は主人公に会いに行っていたのではないだろうか」と思った。


 なぜなら、お茶会で出会って以降。ゲームでは何度か主人公はキュリオス王子と密会をしている。


 今回はなぜかリチャード王子なのだが……。


「本当に……不器用ながらに優しくて……リチャード様が先に学校に通う様になってからもリチャード様は私と会ってくれた。そして私も今年から学校に通う様になって今まで以上に会いやすくなったと思っていたの」


 しかし、クローズは不自然にここで一旦言葉を区切ると「それなのに……」と言ってグッと強く自分の手を握った。


「ここ最近は、何かにつけて忙しいって断られてしまって。何か手伝えることはないかと聞いても断られてしまって……正直、かなり困っていて」


 そう言うクローズの顔は暗い。


 それはそうだろう。ようやく追いついたと思っていた矢先にこの反応だ。これではどうしようともないと考えるのはむしろ普通の反応ではないだろうか。


 しかし、これで分かったのは「クローズはまだリチャード王子の態度が変わった本当の理由までは知らない」という事だった。

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