第四話
「私の事……知っているの?」
そう尋ねると、店員は「ええ、もちろん」と笑顔のまま答える。
「……」
ただ、不思議な事にその笑顔がどうにもうさん臭く映ってしまう。それこそあの自称――。
「いつもであれば試験前には皆さんこちらの方をご利用頂いているのですが、今年はなんとお二人もご購入頂いていなかったのです」
「……」
それは多分。アリアとキュリオス王子の事だろう。
「え、毎年みんな……買っているの?」
「ええ。ありがたい事に」
「……なんで?」
アリアが純粋な疑問を投げかけると……。
「皆様。ご自分の魔法の実力に愕然とするからですよ」
そう笑顔のまま答える。
「それってどういう――」
意味だろうか。
「簡単に言えばあまりのコントロールの下手さに……とでも言いましょうか。本当の魔法の実力はその魔法の威力ではなく、魔法の制御力とも言い換える事が出来る……という事はご存じだと思います」
「え、ええ」
だからこそ、アリアは小さい頃からそこに力を入れていた。
「しかし、入学して受けた授業で彼らは思い知ったのです。自分が今まで学んできたのは出力を上げる事のみで何一つ制御が出来ていないという事に!」
まるで舞台役者の様に店員は声高々に言う。
――いや、もう本当に「どこかにスポットライトでもあるのかしら?」と思わず探してしまいそうなくらいだ。
「……」
しかし、彼の言う事には心当たりがある。
それは入学式の次の日にあった初めての実技の授業の事だ。実はその授業が……色々と大変な事になったのだ。
「? なんで使えないんだ……うわっ!」
「ちょっと! 危ないでしょ!」
魔法が出ない……という人がほとんどだったのだが、中には制御力が甘い学校から支給された杖で放たれた出力が大き過ぎる魔法。それを避けるための放たれた魔法も出力が大きかったせいかぶつかった拍子に教室の窓ガラスが割れてしまった。
「うわぁ! 体が浮いている!」
他にも出力が高い風魔法によってプリントが宙を舞い、時には人が飛んで……最終的にはなぜか教室に雨が降る……などなど本当に天変地異並みの大惨事になった。
「まぁ、毎年の事ですがね。本来であれば魔法が出ないのですが、まれに魔法同士がぶつかって通常ではありえない出力が結果的に出てしまったりとんでもない事が起きてしまったりしてしまう事もしばしばでありまして……」
「なっ、なるほど」
「毎年の事でありますので一応学校側の対策として結界を張っていますので生徒に危害は及びません。ですが、毎年大爆発が起きてしまいます。ですが、今年はそれがなかったそうです」
そう言いながら店員はアリアの方をジッと見つめる。
「しかし、今年はその代わりに教室に雨が降った……と。誰かが先手を打って混乱の中。水魔法を使わなければこうはなりません」
「……」
「一体誰がなさったのでしょう?」
「……さぁ。分からないわ」
アリアは勘づかれない様に表情を変えずにそう答えると――。
「まぁ、そういう事にしておきましょう」
意外にあっさりと店員は引いた。それはもう、アリアの方が拍子抜けしてしまうほどに……。




