第三話
購買があるのは二、三年生が使っている校舎と一年生が使っている校舎のちょうど真ん中にある渡り廊下の位置だ。
その廊下はT字になっており、二、三年生の方からそのまま進めば一年生の校舎に辿り着き、逆の場合もまた然りである。
そして、その廊下を真っすぐではなく、角を曲がってそのまま進むと食堂に行きつく。
この購買はそんな曲がった先が見える位置にあった。
開いている時間は一限目の後から放課後を告げるチャイムが鳴った一時間後までとなっている。
朝に開いていない理由は「この店員が朝が弱い」という何とも情けないモノで、放課後を長くしているのはそのリカバリーではなく「何かと色々な事が起きるのが放課後だから」なのだそうだ。
確かに、朝よりも放課後の方が自由に使える時間が長い分色々な事が起こりそうではある。
しかもこの店員こそが攻略キャラクターの一人で「放課後に長くいる」という事はその分攻略もしやすいという事を暗に意味しているワケで……。
ただ、他の攻略キャラクターたちよりも攻略の難易度はものすごく高い。
その上、この店員は最初から攻略が出来ない『隠しキャラクター』というモノでもあった――。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「……」
扉を開けて入ると、そこはたくさんの商品が並んでいる。
「……」
そこには当然値札が書かれているのだが、たったこれだけの事にアリアはとても感激していた。
なぜなら、ゲームの中では基本的に買い物をしようとしたら「商品を手に取ってそれをレジに持って行く」ではなく「レジにいる店員に話しかけてその場ですべての工程を終わらせてしまう」からだ。
本来であれば普通の事でもゲームの世界では出来なかった事にアリアが思わず感激していると……。
「いらっしゃい。今日はどういったご用件で――」
声をかけられ振り返ると、そこには何とも特徴的な紫の髪をした猫目のキュリオス王子より頭一個分ほど小さくかわいらしい少年の様な男性がいた。
基本的に貴族社会では「位の低い者が気軽に位の高い者に声をかけてはならない」という決まりがある。
しかし、この魔法学校ではそういった「決まり」は適用されず、通っている生徒全員が平等という扱いになり、言葉遣いもまた然りだった。
でも、、それに反発する者は当然いるワケで、王子に対するアリアの態度を影でこそこそ言っている令嬢たちもそうだが、全員が全員……とはいっていないのが現実だ。
ただ元々貴族の中でも位の低いアリアにとってそんな事自体気にしたことはなかった。
それこそ、たとえ庶民に声をかけられてもアリアはそれに普通に答えただろう。
「――おや、君は……」
「?」
話を戻し、振り返るとなぜか店員は驚いた様な表情でアリアを見ている。
「あの、何か」
「いや? 学校から支給された魔法道具だけで試験で二位を取ったお嬢さんだって思ってね」
ニッコリと笑顔を向けられたのだが、アリアはあまりピンときていない。
なぜなら、アリアと同じ学校から支給された道具のみでキュリオス王子は一位を取っていたのだから。




