第四話
「それにしても……」
「?」
「まさかアリアからこんな頼み事をされるなんてね。クローズ令嬢には会った事すらなかったと思うけど」
「!」
それをツッコまれるとかなり苦しいが……事実だ。
しかし、今の状況ではクローズが一番何かしらの行動を起こしそうなのも確かではある。
でも、今の王子の話を聞く限り他の攻略キャラクターの婚約者も嫉妬心に駆られて何かしら行動を起こす可能性も出てきた。
「たっ、確かにお会いした事はありませんが……」
「――気になる?」
「それは……まぁ。自分の……ゆっ、友人のお兄様に関する事ですし、同じ女性としてもとても他人事とは思えず……」
正直、今も王子の事を『友人』というのは気が引ける。しかし、ここでそう言わないと王子が拗ねる可能性があった。
特に陛下からお墨付きを頂いてからは顕著である。
「――へぇ、そっか」
王子は何か言いたそうにアリアを見つめる。
「なっ、なんでしょう」
「じゃあ、アリアはさ。仮に僕がこういった立場だったら……どうする?」
突然王子にそう尋ねられ、アリアは思わず「え」と言葉をこぼした。
でも、ありえない話ではない。そもそもキュリオス王子もゲームでは攻略キャラクターの一人だ。
そして、もし自分が主人公ではなく婚約者ではないものの仲の良い友人だったとしたら……。
「本当ならその方と仲良く出来るのが一番だと思います。でも――」
アリアはそこで言葉を区切り、王子の様子をうかがう。
「――続けて」
王子は笑顔ではなく真剣な表情でアリアに話の続きを促した。
「もし、私という存在が邪魔になるというのなら……私は大人しく身を引きます」
「……そっか。引いちゃうんだ。怒りはしないのかい?」
「特に怒りはしませんね。二人でいるのが良いのであれば、私はいる必要がありませんので」
「へぇ」
「あっ、あくまで私は……ですよ?」
アリアはそう言いつつも「何かマズイ事を言ったのだろうか」と不安になった。
確かに、中には「婚約者がいながら別の女性になびくなんて!」と言う人もいるだろう。
しかし、アリアがその立場だったとしたら……多分「相手を怒る」という選択肢は出てこない。
仮に相手が悪かったとしても、そのまま相手との関係をスッパリと切るだろう。
まぁ、言ってしまえば「それだけの思いがある相手に家族以外では会った事がないから」とも言えるのだが。
「なるほど。うん、アリアの中で僕がどういった位置にいるのか何となく分かったよ」
「え、いや。そういうワケでは……」
なんだか話がおかしな方向へと逸れ始めている様に感じる。
「いや、いいんだよ。アリアの良くも悪くも執着しない性格は。ただ『友人』としては……少し寂しいなって」
「そっ、それは……すみません」
コレは素直に謝るべきだろう。でも、アリアとしては実はあまり釈然としていなかった。




