第一話
「……なるほどね」
「お願い……出来ますでしょうか。殿下」
そう、アリアが思い浮かべた相手と言うのは『キュリオス王子』だった。
「どうしてかって理由は……聞いても言えないよね?」
「……すみません」
――本当は言いたい。
何なら信じる信じないは別として全てをぶちまけたい。でも、内容が内容なだけに下手をすれば不敬罪になりかねない。
「いいよ。僕も隠し事の一つや二つあるから」
「そ、そうなんですか?」
驚いた様に言うと、王子は「そうだよ」とにが笑いを見せる。
「貴族の社会は他人の足を引っ張ってなんぼ。嘘も噂も毎日どこから湧いて出てくるんだって言いたくなるくらいだよ」
「……」
「でもね。アリアのそれは人を守るための隠し事。だから僕は特に詮索するつもりはないよ」
「そんな……人を守るためだなんて」
アリアとしてはあくまで自分を守るため。不敬罪に問われたくないが為に隠しているという認識でしかない。
「君は自分の事しか考えていないって思っているかも知れないけれど、その隠し事によって助けられている人もいると思うよ」
ニッコリと笑う王子に、アリアも「そうですね」と言ってつられて笑った。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「それで、兄上の周囲を調べて欲しい……だっけ?」
「はい」
「それでは……やっぱり僕が昨日話した事が関係しているよね?」
「……はい」
「そっか」
王子としては自分の兄の事をただ話しただけ……いわゆる「世間話」くらいのつもりで話していたのだろう。
「でも……そうだよね。普通に考えて婚約者をないがしろにして別の女性。しかも庶民の人と仲良くしている……なんて話を聞いたら……気になるのも当然か」
「で、出過ぎたマネをしてしまったと自分でも思ってはいるんです。でも……」
「――いや、アリアは悪くない。それに、実のところ兄上の話はお父様たちの耳にも届いている。今は何とか誤魔化せているが……」
「あまり長くは……ですか?」
アリアがそう尋ねると、王子は「ああ」と深刻そうにうなずく。
「正直。兄上だけなら……まだ良かった」
王子その言葉を聞いた瞬間。アリアは嫌な予感がした。
「……まさか」
そう言うと、王子もアリアの言いたい事が分かったのか「そのまさかだよ」と力なく笑う。
「次の生徒会役員全員が彼女のとりこ……らしいよ」
王子はそう言って「ハハ」と自虐気味に笑った……いや、笑うしかない様だ。




