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第一話


「では、早速本題に入りたいのだが……」


 陛下は「コホン」と一つ咳払いをすると、軽く全員に目配せをした。


「ウォーレン嬢」

「は、はい」

「君は『呪文を唱える事なく魔法を使える』とキュリオスから聞いているのだが……違いないか?」

「……」


 陛下はアリアを萎縮させない様に優しい口調で問いかける。


 しかし、当のアリアは「どう説明しようか」と悩んでいた。なぜなら、キュリオス王子が説明したとなれば、それはあの「賊に襲われそうになった場面」という事になるからだ。


 つまり、言ってしまえば「不慮の事故」で要するに『偶然の産物』とも言える。


 確かにアリアは「呪文なしで使える」と言えばそうだが、でもそれは今の段階では初歩中の初歩ほどのモノで、せいぜい「物を浮かせる」程度しか出来ない。


 ただ、実はこの初歩中の初歩の魔法ですらこの世界の「偉大」とされている魔法使いは呪文が必要なワケなのだが……。


「……お父様。お言葉ですが、それはあまりにも直接的に言い過ぎです。それに、僕が見たのはあくまでその状況のみ。確かに呪文を唱えたという事実はありませんでしたが、通常の魔法を使われる状態でありませんでした」

「――ふむ。なるほど、確かにキュリオスが魔法を使われるのを直接見たのは先のあの一件のみ。確かにあの状況は普通とは言い難いだろうな」

「ええ。それを踏まえて考えると……むしろ『咄嗟に出てしまった』と考えるのが妥当かも知れませんわね」


 キュリオス王子の説明したのか陛下と王妃様も「うんうん」と頷く。


「――実際はどうなんだ?」


 一応キュリオス王子の説明に納得は出来たものの、ここはやはり実際に使った本人からの説明が欲しいらしく、お二人はアリアの方を見る。


「……」


 確かに王子は実際にアリアが魔法を使っているのを見ていたとは言え、アリア本人がいるのだから本人の口から説明して欲しいと思うのは当然だろう。


「あ……はい。キュッ、キュリオス殿下のおっしゃられた通り。あの時は……その、無我夢中で……。ですが、どうやら私はどうやら焦ったり感情が高ぶったりしてしまうと無意識に魔法を使ってしまう事があるらしいのです」

「ふむ」

「……ふっ、普段はそんな事はないのですが」


 緊張しながらの説明だった事もあり、少し言葉に詰まってしまったが何とか説明する事が出来た。


「――なるほど」

「ちなみに意識的に呪文なしで魔法を使う事も可能なのかしら?」


 そう王妃様に尋ねられると、アリアは小さく頷き。


「その、簡単な……本当に初歩的なモノであれば大体は呪文なしで出来ます」


 アリアがそう言うと、王妃様は「それはすごいわね」と驚きながら言う。


「通常であればどんな魔法の使い手でも最低限の命令をしなければ使えないというのに……」


 王妃様がそう小さく呟く。


 そう、この世界の魔法の呪文と言えば前世でプレイしていた「ゲーム」で言うところの『ファイアーボール』などは使われない。


 言ってしまえばここのでの『呪文』は「命令」といわゆる『コマンド』として扱っていた。


 要するに、物を浮かせたかったらその物に対して「浮け」と命じる事が『魔法』となる。


「なるほど、コレでハッキリしたな」

「ええ」


 お二人はそう言って王妃様は持っていたティーカップをそっと置く。


「え?」


 しかし、当のアリアはお二人が何にハッキリしたのか分からずただ目を白黒させるしかない。


「――ウォーレン嬢。落ち着いて聞いて欲しいのだが」

「はっ、はい」


 突然陛下から真剣な表情を向けられ、アリアは思わず身構える。


「君は……先祖返りと推察される」


 陛下からそう静かに告げられ……アリアはまたその陛下からの言葉の意味が分からず、思わず顔をキョトンさせるしかなかった。


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