第四話
「……」
「……」
王子に手を引かれて共に王宮に入って廊下を歩いていると……。
ふとアリアは少し足早に先を行く王子を見ながら「コレって、エスコートって言えるのかしら?」と疑問に感じていた。
正直アリアの思い描いていた「エスコート」はこう、相手に寄り添って歩くようなモノを想像していたのだが……。
「~♪」
でもまぁ、王子がどことなく楽しそうに見えたし、アリアも特に気にしていなかったので、それについて口にはあえてしなかった。
「フフ……あ」
そう「口にはしない」なんて思っていた矢先。アリアの口から思わず笑みがこぼれてしまった。
「ん? どうかしたかい?」
「い、いえ。随分楽しそうだな……と」
王子に聞かれて「あえて誤魔化す必要もないだろう」とアリアはそのまま素直に答える。
「うーん……そうかな?」
軽く鼻歌の様なモノが聞こえたにも関わらず、どうやら王子は自覚がなかったらしい。
「――そうです」
アリアはそう言いつつリアの方を見ると、アリアの後ろを歩いていたリアも静かに頷き、リアの隣にいる王子の護衛と思われる男性も小さく頷く。
「うーん、そっか。自分じゃ気づかなかった。でも、それはきっと……」
王子はそう言いつつアリアの方をジーッと見つめる。
「?」
しかし、アリアは「なぜここで私を見る?」という疑問しか浮かばず、キョトンとした表情で固まった。
「――うーん。コレじゃあどうやら伝わらないみたいだね」
そう言うと、王子は少し残念そうに言いつつ苦笑いを見せる。
「――お嬢様は純粋な方な上にまだお若いので」
リアがそう言うと、王子は「ははは、なるほどね」と笑う。
「じゃあ。もっとストレートに言わないと伝わらないって事だね」
「……え?」
何のことだか分からないアリアが首をかしげると、リアは「こっちの話です」と馬車でアリアが言った言葉をそのまま返してきた。
「まぁ、それはそれとして……だ」
「はい」
「実はちょっと急いでいてね」
「なっ、なぜですか?」
どうやら王子の早足にはちゃんとした理由があったらしい。
「今日はさっきも言った通り庭園でお父様とお母様に会ってもらう事になったのだけど……実はアリアの事は王宮でもごく少数の人にしか伝えてない。しかも、今回の一件に関して知っているのもごく一部だ」
「……つまり」
「君がここに来ている事は一部の人間にしか伝えていない。そして、お父様とお母様と会う場所が庭園になったのも『そこが王宮の一番出入り口に近かったから』という事と『その庭園の存在を知っているのはごく一部の人間だけ』という事からでね」
「……」
どうやら今回の一件を知られたくない王家としては「目立つ」という事だけは避けたかったのだろう。
「君には随分迷惑をかけたし、君のおかげで大きな騒ぎにならなかった。そこには僕たち王家一同ものすごく感謝している。だから隠れる様な形式なのは申し訳ないと思うのだけど」
王子は申し訳なさそうに言う。
「いえ、そこはお気になさらないでください。むしろ殿下を危険な目にあわせてしまって……」
「いや。あの時……もし君が魔法を使ってくれなかったら僕はどうなっていたか……正直考えたくもないね」
「そっ、そんな……私は」
ただ無我夢中だっただけだ。
「それでも結果として僕は君に助けられた。それに、今日の事もそんなに身構えないで『お茶会』だと思ってくれればいい。お二人とも詰問などではなく、ただ君のお話を聞きたいだけみたいだから」
「お話……ですか」
しかし、改めてそう言われてしまうと……やはり少し身構えてしまう。
「大丈夫。お二人とも優しいし、怒っているとかそういう事じゃないから。さて、着いたよ」
王子と話をしている内にいつの間にかキチンとしたエスコートの形になっていた事にアリアは少し驚いたが、それ以上にキレイな花が咲いている庭園に驚いた。
「……」
しかし、その庭園の中心にあるテーブルとイスに座っているお二人を見て、アリアは気を引き締めたのだった。




