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第一話


『迷惑をかけてしまったお詫びにドレスを送らせて欲しい』


 王宮へ向かう様に言われたに日にちの二日前。キュリオス王子からそんな手紙が届いた。


「……」


 ありがたい事に「王宮へ向かうのは即刻」という事はなく、数日間を空ける事になった。


 でもあの一件が起き、その日の内に我が家に王宮から使者が来た時。アリアは心底「ちょうど今、両親が旅行中でよかった」と思った。


 現在魔法学校の寮にいるお兄様からはアリアを案じる手紙が届いたが、それには事の経緯を王子の襲撃未遂の一件はぼかして伝えた上で「私は大丈夫」と返事を送っておいた。


 魔法学校は基本的に寮生活で、一年の間に一回だけある長期休暇以外は近くの街までしか外出が許可されていない。


 それに一応「王宮に来る様に」とは言われてはいるモノの、実は「命令」というワケではないので親も一緒に行く必要はない。


 どうやら国王陛下たちはどうやらアリアの父親はアリアに何も関心がなく、母親は子供たちにかなり厳しく当たっている事を知っているらしく、だからこそ「王宮に来るのはアリアと使用人一名で構わない」といった旨を使者から言われている。


「……」


 そんな何もかもが特殊な状況の中で王子のこの申し出は正直ありがたい。何せ前回の「王宮に行った時」とは状況が全然違うのだ。


「国王陛下や王妃陛下の前に出るのだからいつもと同じドレス……とはいかないでしょうし」


 そんな方たちがいる場所で着ていく服など夜会どころかお茶会にすらほとんど参加した事のないアリアにはない上に「どういったドレスを着て行くと良い」とか優しく教えてくれる友人もいない。


 本当ならキュリオス王子だって「友人」と呼ぶにはこちらが申し訳なさすぎるくらいなのだが……。


「でも、うん。せっかくの申し出だし……むしろ着て行かないと失礼に当たるだろうし……うん。このドレスを着て行こう」


 アリアは手紙と共に届いた少し大きめの箱に入っている青いドレスを手に取りながら小さく呟くと、近くで控えていたリアは「かしこまりました。では当日はその様に……」と答えた。


「ちなみになのですが今回の件、旦那様、奥様、並びに他の貴族の皆様には伝わっていないようです」

「そう、それは良かった。本当に……」


 それには本当に胸を撫でおろした。アリアに興味のない両親はともかく貴族たちに少しでも伝わっていたらどうしようと思っていたところだ。


 それこそちょっとでも話が外に出てしまってはおかしな伝わり方をして、下手に噂が広まってしまう可能性は否定出来ない。


 そんなおかしな噂を立てられたらこちらもたまったものではないし、何より王子に申し訳が立たない。


「我が家にお越しになった時、使者の方たちは皆さま『王族』の紋章などが入った馬車などは使っておりませんでした。それはおそらく……」

「――私に気を遣ってくださったのね」


 そう言うと、リアは「おそらく」と小さく頷き、その心遣いにアリアは「はぁ」と深いため息をつく。


 アリアがもう少し位の高い貴族であれば、その様な配慮をされる必要もなかったかも知れない……。


「……お嬢様」

「何?」

「――お嬢様が私にご自身の事を打ち明けてくださった日の事を今でもよく覚えております」

「ああ、そんな事。あったわね」


 そう、実はリアには「自分が膨大な魔力を持っている事」は既に話している。しかし、言い方を変えるとリアに言ってあるのは「それだけ」だ。


 それに、そもそもリアにその話をしたのは「口が堅そう」だとアリアが判断しただけであってそこに特別な感情はない。


「突然どうしたの?」

「いえ、ただお伝えしようと思っただけです。お嬢様のお持ちの魔力は本物だという事を」


「……」


「そして、私はこれからもずっとお嬢様に付いて行く……という事を。その事を今一度お伝えしようかと」

「――それって……意味を分かって言っているの?」

「はい」


「――それってつまり。私が例えば両親から勘当されるような事があっても……」

「もちろん付いて行きます。私はお嬢様の専属メイドです」

「そう……」


 アリアの決意に満ちたリアの表情とハッキリと言ったその言葉に少し泣きそうになりながらそれを隠す様に窓の外を見る。


 なぜそうしたのか……それは泣いている姿を見られるのが恥ずかしかったから。


「……」


 でも、本当はとてもうれしかった。


 なぜなら、この世界に来て「どんな時でも自分の味方でいてくれる」と言ってくれる人を……見つけられた様な気がしたから。


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