第四話
──さて、この状況……どうしたモノか。
考えられる選択肢はそう多くもなさそうだ。そのうちの一つに「強行突破」というのも選択肢にはあるが……。
「いや、やめよう」
確かにアリアの魔力を持ってすれば中にいる賊を捕らえるくらい造作もないだろう。
しかし、それでは最終的には王子に迷惑をかける事になってしまう可能性が非常に高い。
それにもし、上手いかずに公になってしまえば王子に迷惑をかけるだけで話がすまないかも知れない。
何せ相手のターゲットは『王子』なのだから。
でも、そうなると……残る選択肢としては「この地域に配属されている騎士」に頼むくらいしかないのだが……。
「まぁ。普通に考えてそうするべきなのだろうけど……」
しかし、実は大きな問題がある。
「ふぅ」
アリアはため息混じりに『色変え』した自分の髪を軽く触る。
「……」
基本的にこの国には「騎士」と「魔法騎士」というそれぞれ違う役割の『騎士』が存在している。
どちらも一応「騎士」とは付いているものの、全然違う職業だ。
そして、アリアの頭に浮かんでいるで「騎士」とは「魔法を使わない騎士」を指している。
ちなみに、その「騎士」はほとんどの人が魔法を使えないらしい。
しかし、コレが「魔法騎士」となると話が変わってしまい、彼ら「魔法騎士」は魔法が使える上にお兄様ほどではなくても魔法探知にも優れていると聞く。
騎士であれば特に問題はないのだが、そんな魔法探知に優れた「魔法騎士たち」の前に『色変え』をした状態のアリアが出て行けば……たとえ事情を説明したとしても「貴族の位を偽った」として捕らえられかねない。
「……」
人によっては「じゃあ色変えの魔法を解けばいいじゃない」なんて簡単に思われるかも知れないが……。
実は魔法を解いた後にもう一度魔法をかけるのは同じ魔法を長時間継続して使用するよりも魔力の消費が全然違う。
アリアは膨大な魔力量を持ってはいるモノの、それでも魔力を消費すれば当然疲れが出る。
だからこそ、後の事を考えて出来れば魔力の消費は避けたいところだ。
それに、そもそもの話。魔法騎士にしろ騎士にしろ子供であるアリアの話をまともに聞いてくれるかどうかも分からない。
「さぁて」
そうなると残る選択肢は「このままこの話を聞かなかった事にして立ち去る」という事くらいしかない。
「いや、さすがにコレはない……かな」
ここまで話を聞いてしまっては逆に立ち去るのは無責任だ。しかし、選択肢もなく「どうしようか」と一人膝を抱えてしゃがんで困っていると……。
「――やっと見つけた。探したよ」
ふいにアリアの頭上から少年の声が聞こえた。
「あ……。キュリオス……様」
王子は「名前で呼んで欲しい」と言われていたのだが「さすが名前だけで呼ぶのは」とアリアが渋り、押し問答を繰り返した末になんとか「様」付けを許可された。
「こんなところにいるなんて……驚いたよ」
「あ、えと。その……すぐに追いかけようと思ったのですが、その。迷ってしまって」
アリアがそう説明すると、キュリオス王子は「そうだったんだ。良かった」と言ってなぜかホッと胸を撫で下ろす。
「え?」
「ひょっとして帰ってしまったのかと思った」
「そっ、そんな事!」
そう王子の言葉を必死に否定しようとした時──。
「!」
王子の背後を覆う程の大きな影にアリアが気が付き、慌てて咄嗟に自分の手のひらをその人物がいる上へと向けた──。




