第三話
――昔から、決して運がいい方ではなかったと思う。
自分の思い通りになんてほとんどなった事はないし、どちらかと言えばいつも貧乏くじを引かされる役割だったと思う。
前世で亡くなって自称「神」に半ば強引に『魔力』を押し付けられたと分かった時やお茶会で騒ぎが起きた時だって……実は内心「ああ、私はこの世界でもこういう役割なんだ」と悟っている自分がいたのも確かだ。
でも、何もかも全部悪い事ばかりではなかったと思う。
それこそ、みんながやりたがらなくて結局くじ引きやじゃんけんで決まった事によって「あ、私って運が悪いんだ」って分かるようになったし、何よりそれによって様々な経験が出来たと思っている。
──さて、そんな前世……だけでなく、今回もどうやら直らなかった「運の悪さ」をアリアは前世も踏まえて一人思い返しているワケなのだが。
そもそもどうしてそんな事を考えているのかと言うと……。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「……あれ」
ふと気が付いた時には既にアリアは一人になっていた。
事の発端は「自分が繋いでいた王子の手を離してしまった」という事はすぐに分かった。
しかし、よーく考えてみて欲しい。
子供の力はそんなに強くない。だからと言って「手を離しちゃいけない」と思ってまだまだ未熟なアリアが身体強化の魔法を使おうものなら……王子の腕を破壊しかねない。
まぁ、結果を要約すると……アリアが市場の人混みを甘く見てしまっていたのが全て悪いという事なのだが……。
「……」
辺りをキョロキョロと見渡すと、ここはどうやら使われなくなった倉庫の一つの様だ。
すると──。
『おい! なんで王子がいねぇんだ!』
「!」
突然大きな声が倉庫の中から聞こえてきた。
『お前ちゃんと確認したんだろうな!』
『ちゃ、ちゃんと俺はこの目でちゃんと確認した! お前が見失ったんだろ!』
『はぁ!? 俺のせいだって言いてぇのか!?』
どうやらこの倉庫は相当古いモノらしく、出入り口には薄い木製の扉しかない。これでは全然防音の効果なんてあってないようなモノで、中にいる男たちの声が外にいるアリアの耳にしっかりと届く。
「はぁ……」
そして、確実に面倒な事になりそうなこの状況にアリアは一人ため息をついていた。
なぜならキュリオス王子が自分で今回の外出を「お忍び」と言っていたからだ。
しかし、今の話から推察するに、男たちは王家や貴族に反感を持っていて王子を狙っている。
それはつまり……また騒ぎの火種になる様な事を偶然耳にしてしまったという事を意味するワケで――。
「でも……」
たまたまとは言え、この扉の向こうにいる男たちを野放しにするワケにもいかないだろう。
なぜなら、男たちが「王子」を狙っているのは確かなのだから。
しかし、コレだけを聞いてもそれがリチャード王子なのかキュリオス王子なのか……はたまた二人共なのか……それが全然分からない。
「……」
そもそも二人共「王子」という事に変わりはない。
ただ、実は庶民の認知としてはリチャード王子が「王太子」という立ち位置で『王子』と言えば……と言うと、彼を指す事が多かった。
「じゃあ……」
それを踏まえて考えると……可能性としてはリチャード王子の可能性が高いだろう。
しかし、仮に彼らが誰かに雇われた賊だったとしたら……キュリオス王子の可能性も否定出来なかった。




