第六話
――私は殿下が好きです……なんて、まさか自分の口から言う日が来るとは……この世界に転生した頃のアリアには全く考えられなかった。
クローズと別れて寮に帰ってふとそう思う。
「でも……」
最初は不本意だったのも事実だ。殿下……キュリオス王子はゲームの攻略キャラクターで、アリアはゲームに名前すら出ていない「モブ」で……もはや釣り合う釣り合わないとかそういう次元の話ですらない。
そもそも、あの頃のアリアは単純に「王子と関わりたくない」という一心だった。なぜなら、どう考えても「面倒くさい事になる」のが目に見えていたからだ。
でも、実際のキュリオス王子はゲームの印象とは全然違った。
邪険にしているアリアに対しキュリオス王子はいつも笑顔で楽しそうで……そんな彼に触発されたのかいつの間にか自然と笑顔が増えている事にアリアも自分で分かるほど増えている様に思う。
もし、王子がいなかったら……きっと学校生活ももっとつまらないもになっていたはずだ。
「……」
しかし、アリアには一つ大きな問題がある。
それが『鑑定』の魔法だ。
でも、キュリオス王子が勇気を出して……なのかは分からないが、告白をしてくれたのであれば、こちらも誠意を見せるべきだろう。
それに、いつまでも自分の感情を隠せるとも思えない。たとえ自分では隠せていると思っても、きっといつかはバレてしまうはずだ。
問題は「いつ」というだけで。それならば「気が付いてもらう」よりも自分の口から説明するのが一番良いだろうと思う。
「……」
正直「言ってどうなるか」と考えるだけで不安になってしまうが……それでも言わなければ先に進めない。
「――よし」
アリアはそう意気込んでいたのだが……そんな気持ちとは裏腹にあという間に時間は過ぎて『星空会』当日を迎えてしまったのだった――。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「はぁ」
――私の意気地なし。
「どうかしたかい?」
「い、いえ! 大丈夫です」
ヒョコッと顔を覗いてきた王子にさえ驚いてしまう始末だ。いつもならこんな事なんて事なく軽く流せるのに……。
「……そっか」
「……」
王子は……いつもと変わらない。
それが少し寂しくもあり……でも、この関係を壊したくない自分もいる。それに加えての『鑑定』の話だ。
でも、どうしても緊張してしまって上手く話せなくて……結局誤魔化してしまう。
――さて、どうしたモノか。
「アリア」
「はい」
アリアが「どうしよう」と考え込んでいると、唐突に王子が尋ねる。
「このコース。アリアだったら課題なしで制限時間どれくらい残してゴール出来る?」
「え、そう……ですね。通常ならば二十分程で……ゴール出来るかと」
一度下見をしているコースとは言え、今回は「レース」だ。正直何が起きるか分からない。それらも考えて答えた。
「へぇ、さすがだね。じゃあ急いだら?」
「――十分もあれば」
そう答えると、王子は「ふーん」と興味深そうに答える。
「あの、それが……何か」
質問の内容の意図が分からず、王子に尋ねた……とほぼ同じタイミングでスタートの号令が鳴り、それと共にアリアと王子はなぜか突然黒いモヤの様なモノに包まれた――。




