第七話
「こ、これは……」
辺りを見渡しても、そこに広がるのは真っ黒い世界……なのにも関わらず、キュリオス王子の姿はハッキリと見えるという不思議な状況だ。
「簡単に言えば『空間に人を閉じ込める魔法』とでも言えばいい……のかな」
「……こんな魔法。聞いた事がありません」
「そうだろうね。でも、この魔法は確かに存在していたんだよ。しかも、そこまで難しくもない」
「存在していた……ですか?」
この口ぶりから察するに、どうやらこの魔法は王子が創り出したモノではないらしい。
「どうやらこの魔法はかなり昔に使われていた魔法みたいだね。ただ……使用者も一緒に閉じ込められる上に黒いモヤの様なモノは周囲にも見えてしまうから、それならば『人払い』の魔法の方が使い勝手が良いという事でこの魔法はあまり使われなくなったみたいだね」
そこまで分かっているという事は、王子は「ワザと」この魔法を使ったのだろう。
「……ではなぜ? わざわざこの魔法を使われたのですか? 『人払い』の魔法で良いのでは?」
「使ってみたかったというのも一つの理由とはあるね。でも、それ以上に周囲に知らせるためという理由があってね」
「周囲に知らせる?」
アリアが首をひねると、王子は「うん」と頷く。
「突然僕の姿が見えなくなったら大変だからね。事前にこの魔法について知らせておいた。どういった経緯で使うのかも。そうすれば少しは心配を減らせるだろうなって、後は……」
「?」
王子は含みのある言い方をしつつ、ズイッとアリアに顔を近づけた。
「アリアの言いたい事とか話したい事を誰にも聞かれずに話せるんじゃないかなって思ってね。ここ最近、ずっと機会をうかがっていたみたいだから」
「……」
――バッ、バレている。
でも、それも仕方のない話なのかも知れない。それくらい最近のアリアの行動は……自分で言うのもおかしいけれど、かなり怪しかった。
「……バレて……いたのですね」
「どれだけ一緒にいたと思っているのかな? それくらい分かるよ」
王子の言葉に、アリアは思わず「フフ」と笑う。
確かにそうだ。思えば……随分と長い時間を共に過ごしてきた。だからこそ、言えた事もあったし、言えなかった事も……。
「――殿下」
「うん?」
アリアは「すぅ」と息を吸って軽く「ふぅ」と吐き、深呼吸をした。何度も頭の中で考え、シュミレーションはした。後は……勇気だけだ。
「私は……幼少の頃から『鑑定』の魔法を使う事が出来ます。ずっと黙っていて……申し訳ありませんでした」
そう言ってアリアは深々と頭を下げる。
この国家機密とも言える秘密を「ずっと黙っていた」という事は、本来であれば処罰されてしまう可能性もあるかも知れない。
そして、それによってお兄様に……いや、家に大きな影響を与えてしまうかも知れない。
だから、本当は隠さずにもっと早くに言うべきだったのだ。
でも……それよりも、この時のアリアはとにかく「やっと言えた……」という安堵の気持ちが勝っていた。




