第四話
「どうかされましたか?」
呼び止められた後。アリアは王子から「少し……話がある」と次々と帰っている先輩たちから少し離れた場所に来た。
――確かここは……。
ゲームの中で、主人公が自分ではなく兄のリチャード王子が好きだと勘違いしたキュリオス王子が「それでも……」と告白した場所だ。
ここは学校にある古いサロンの一つで、定期的に掃除などされてはいるモノの、やはり年季が入っているのが分かる。
しかし、ここでしか見られない花なども植えられている事をアリアは知っていた。
ただ、下手に近づくと知らない内にイベントに巻き込まれている可能性もあったため、不用意に近づく事はなかったのだが……。
「……」
「何か予定でもあったかな?」
「い、いえ。特には」
寮に帰ったところで宿題などの勉強をするくらいだ。
「……そっか」
「あ、あの……。どうかされましたか?」
「え?」
「先程から、その……静かだな……と」
アリアは思った事をそのまま言っただけのつもりだったのだが、どうやら王子はそれが面白かったらしく「ハハハッ!」と声を出して笑った。
「??」
しかし、アリアとしては何がそんなに面白いのか分からない。
「はぁ。いや、アリアからしてみたら何で笑っているんだろうって思ったよね?」
これにアリアは素直に「はい」と頷く。
「ふっ、相変わらず素直だね。でも、その素直さがかえって危うい……かな」
「危うい……ですか?」
一体何のことだろうか。
「アリアのその反応を見て勘違いしてしまう輩がいるかも知れないって事だよ」
「……?」
残念ながらアリアに心当たりがない。
「いつもなら僕が目を光らせているけどね……。それでも完ぺきとは言えないみたいだ」
キョトンとしているアリアに対し、王子は一人で何やらブツブツと呟いている。
「で、殿下?」
そんな王子に対し、アリアは思わず声をかけると……。
「本当は卒業まで待つつもりだったけど……止めた」
そう言って王子はパッと顔を上げてアリアをジッと見つめる。
「――返事は今じゃなくていい。断ってくれてもいい。それで罪や罰を与えるつもりもない」
「……」
「ただ……知っていて欲しいとは思う」
「なっ、なんでしょう」
何となく……本当に何となく。アリアはキュリオス王子が何を言いたいのか分かった気がした。
しかし、それと同時に「いや、違う。そんなの自分の願望だ」と否定している自分もいる。
だからこそ、アリアはあえて「分からないフリ」をした。
「――僕はずっとアリアが好きだって事」
「……」
「突然こんな事を言って驚かせてしまったとは思う。ずっと友達でもいいとも思った。でも、誰かに奪われてからじゃ遅い。そんなの……絶対我慢出来ない」
キュリオス王子は今までで一番真剣な眼差しをアリアに向けていた――。




