第二話
「……ふぅ」
確認の作業は思っていたよりも順調に進んだ。
元々管理をしているのがクリスという事もあり、アリアも「その辺りはキチンとしている人」という認識だったため、あまり心配はしていなかった。
だからこそ、シュレインの行動がやけに怪しく見えたワケなのだが。
「そっちの様子はどうかな?」
そう声をかけてきたのは現生徒会長のアリウス・アートネラだ。彼の一言によって不穏な空気が一瞬和らいだのは言うまでもない。
「今のところは……順調です。何事もなければ今日中に終われるかも……」
アリアがそう言うと、会長は「もうそんなに!」とややオーバーなリアクションで答える。
先ほどもそうだったが、どうやら会長はどこか芝居がかった話し方をする人の様だ。
それが癖なのかどうかは知らないが……。
いつものアリアであればこういったワザとらしいリアクションに少しイラッとしてしまうかも知れないが、不思議とそういった嫌な気持ちはしなかった。
それは会長が持つ元々持っている雰囲気だからこそ成せる技なのか……それとも、ワザとと自分でも分かっていて相手を不愉快にさせないギリギリのラインを知っているからなのか……どちらにしても、この人にはあまり嫌悪感は抱かなかった。
今はそんな事よりも……。
「早い……ですか?」
「もちろんだよ! 前回は一週間くらいかかったからね!」
サラリと会長はいったが……どう考えてもそれはかかり過ぎな様な気が……。
「正直焦ったよ。本当に間に合うのかってね」
しかし、ずっとしゃべりながらゆっくりとしていたのであればそれだけ時間がかかるのは当たり前だ。
「本当は注意をしたかったけどね。彼らが必死に彼女の気を引こうとしているのも目に見えて分かっていた。だからこそ注意をすべきだと思っていたのだけど、彼らは貴族かお金持ちの家のご子息だからね。下手に口を出してしまった結果何をしてくるか分からなかった」
「……」
要するに「触らぬ神に祟りなし」という事だったのだろう。
「本当はこちらも俺たちに色々と教えてくれた先輩たちの様にしたかったけど」
「……」
どうやら主人公たちは生徒会室を体のいいサロンとして扱っていた様だ。
「いくら身分の差を……とか先輩後輩の関係が……とか言ってもなかなか難しいところがあるよ。本当に」
主人公たちが仕事をしなかったがために会長たちは昼休みなどを返上して生徒会の仕事をしていたらしい。
「……と話こんじゃったね。ごめんね」
「いえ」
それに関して生徒会との関わりがほとんどないアリアから言う事は特に何もない。せいぜい言えるのは「お疲れ様です」という事くらいか。
「ところでさ」
「はい?」
「君はさ。信じているかな? その『ジンクスの話』をさ」
コソッと小さな声で聞かれ、アリアは「えーっと」と答えに迷った。いや、それよりも……。
「どうして私に聞くのですか?」
「え! いやぁ、ほら。女の子ってそういう話が好きなのかなって」
「それでしたら生徒会の中にも副会長の方にお聞きになった方が……」
アリアがそう言うと、会長の顔が突然真っ赤になった。
――なるほど、そういう事か。
「……ひとそれぞれだとは思います。ですが、私がそう言った事により会長に勇気が出るのであれば……行動されるのもありかと」
そう言うと、回答は「そっか。そうだね」と小さく呟き、すぐに「聞いてくれてありがとう!」とアリアにお礼を言って去って行った。
「――お礼を言われるほどでもありませんよ」
アリアは一人そう小さく呟いたのだが……まさかこの現場を「あの人」に見られていたとは……この時のアリアは思ってもいなかった。




