↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
7/9

――第7章・雷撃――

廃墟と化した通りを雷鳴が引き裂いた。ミチコがオマリロめがけて急降下し、刃を交える。稲妻があたり一帯を駆け巡り、建物を焦がし、車を次々と破壊していった。


「雷よッ!」


凄まじい爆発が起きた。


呑み込まれる寸前、オマリロは跳び退いた。女の攻撃には殺意が満ちている。だが、殺されてやるつもりはなかった。


ミチコが刃を高く振りかざし、一瞬で振り下ろした。オマリロは前腕で受け止め、刃で宙を斬って彼女を押し返す。ミチコが咆哮すると、さらに稲妻が通りへ降り注いだ。


ミチコが首を狙って飛来した。オマリロがかわすと、彼女はその脇をかすめて飛び去り、再び旋回してくる。今度は、少し低い位置を狙っていた。


オマリロは手でその刃を止めた。だが、続く蹴りを受け、建物の列を突き破って吹き飛ばされた。


女の目は、オマリロが久しく見ていなかったほどの怒りに燃えていた。彼が立ち上がるより先に、もう真上へ迫っている。


だが、オマリロのほうが速かった。


「呪源拘縛者・六角防御機構!」


長らく使っていなかった金色の立方体が現れた。それは彼を包む盾となり、ミチコの斬撃を弾き返す。


ミチコが激しく斬りつけ、盾を引き裂こうとする。その中央に巨大な金色の砲台が形成され、竜の女の胸を撃ち抜いた。


〈ボス HP:100%→90%〉


ミチコは傷に触れた。稲妻がばちりと弾け、傷口が塞がる。彼女は空へ舞い上がると、刃を振るい、オマリロを追尾する稲妻の斬撃を放った。


オマリロは手をひと振りして、そのすべてをたやすく弾き返した。


ミチコは彼の頭上に浮かび、目を細める。


「まだそれだけの力が残っているのね。なのに、出し惜しみしている。なぜ? 何か制約でもあるの? それとも、ただ私を侮っているだけかしら、ニュガワ?」


オマリロは答えなかった。


ミチコの体を電流が駆け巡り、その刃がわずかに大きくなった。言われるまでもない。さらに力を溜めていることを、オマリロは知っていた。


「まあいいわ。今のあなたでは、ここから出られない。這い出してきた地獄の穴にでも、戻っていればよかったのよ」


彼女の頭上にUIが現れた。


〈ドメイン効果:竜の継承者。ミチコは闘士を除くすべての呪源を無効化できる〉


ミチコがさらに力を溜める中、オマリロは振り返った。レオがザリアとアオイを瓦礫の中から助け出している。


ミチコもそれに気づき、三人に向けて光線を放った。


レオがとっさに檻を作り出したが、光線はそれを一撃で粉砕した。檻の残骸が消えていく。


三人は無傷だった。


「ニュガワさん!」レオが叫んだ。「この女は何者なんです? 何の用があるんですか? 私たちはまだほとんど進んでいない。こんなところまでドメインボスが来るはずがない!」


「女、命を奪いに来た」オマリロは説明した。「まず、こちらの命。次に、子供らのだ」


子供たちは息をのみ、口をあんぐりと開けた。


ミチコが姿を消した。オマリロの背後に現れ、頭へ蹴りを放つ。オマリロはクレイモアの柄頭を彼女の顎に叩き込み、何台もの車を巻き込むほどの勢いで吹き飛ばした。


ザリアは脇腹を押さえ、槍を支えに立ち上がった。そして、その槍を構える。


「よし、だったらあたしらも手伝う!」


アオイとレオが勢いよく彼女に向き直った。


「正気?」アオイが言った。「あたしたち、レベル150,000なんて全然届いてないし、あたし、二十歳になる前に死ぬ気ないんだけど!」


「私も同意見だ」レオが言った。「大物の相手は、それに見合う実力者に任せるべきだ。今の私たちの役目は、このダンジョンを脱出すること。出てくる敵に片っ端から挑むことじゃない」


「お前らのせいで、あたしらが弱く見えるんだよ!」ザリアが反発した。「ジジイにおんぶにだっこされるために、ここにいるんじゃねえ! ママの話が本当なら、あの人は足手まといが嫌いなんだ。ここから出たくねえのか? それとも、また見捨てられたいのかよ?」


二人は顔を見合わせた。


その向こうでは、オマリロとミチコが通りで激しくやり合っていた。竜の女がオマリロをつかんで飛び上がったが、彼は一瞬の動きで両翼を斬り落とした。


〈ボス HP:90%→85%〉


ミチコは彼を取り落とし、道路にひびが入るほどの勢いで着地した。


ザリアはそのひびを一瞬見つめ、兄と妹へ向き直った。


「で、お前らはどうすんだよ。あたしはもう、やること決まってるけど」


槍を握る手に力がこもる。


「選択肢はなさそうだ」レオがアオイに言った。「あいつはもう決めている」


アオイは両手を上げた。


「わかったわよ! でも、あたしは後ろにいるから! 命懸けとか、お断りなんで!」


それ以上聞くまでもなく、ザリアは槍を蹴り放った。槍はミチコの肩に深々と突き刺さる。


ミチコは傷口に目をやった。


〈ボス HP:85%→83%〉


鼻で笑い、肩から槍を引き抜く。その関心が、オマリロからザリアへと移った。


「面白いわね。ちっぽけな子猫が、理解もしていない力で遊んでいるなんて」


ザリアが手を差し出すと、槍が掌へ戻ってきた。


「先に仕掛けてきたのはそっちだろうが、このクソ女!」


オマリロは、その対峙を見ていた。目にはかすかな好奇の色がある。


ミチコが衝撃波を放ち、全員をその場にひざまずかせた。


「子供たちから始めるのはどうかしら?」ミチコがつぶやいた。「そうすれば、伝説のハンターも出し惜しみする理由がなくなるでしょう」


誰も反応する暇がなかった。


ミチコが三人の頭上に現れ、両手の間に稲妻を生み出す。レオが素早く動いた。


「呪源拘縛者・無限牢獄!」


小さな檻がミチコを包み込み、彼女を閉じ込めたまま三人から離れる方向へ飛んでいった。だが、ミチコはすぐに斬り裂いて抜け出す。その刃は、獲物を仕留めようと構えられていた。


ミチコが三人の立っていた場所へ刃を突き立てる寸前、アオイが兄姉をつかんで駆け出した。


ミチコはすぐに追いついた。ザリアが前へ飛び出す。


全力を振り絞り、どうにかミチコの刃を受け止めた。ミチコは片腕だけで押し込み、その目を紫に閃かせる。


「これが、今の伝説のハンターの連れというわけ?」ミチコは言った。「笑えるわね。もっと期待していたのに」


ザリアが連続突きを放ち、一瞬だけ不意を突いた。だが、竜の女はほとんど即座に立て直し、真っ向から攻撃をさばいて、ザリアを押し返していく。


アオイが猛スピードで突っ込み、肩からミチコにぶつかった。ミチコが建物へ叩きつけられる。


その瞬間、アオイはぴょんぴょん跳ねて自慢した。


「当たった! 見た? あたし天才じゃん!」


ミチコは建物をまるごと真っ二つに斬り裂きながら、歩み出てきた。レオがぎりぎりで檻を作って行く手を阻むが、それも斬り捨てられる。


ザリアは槍を回してミチコの突きを受け止め、脇腹へ蹴りを放った。竜の女は腕で止めたが、そこからわずかに血が流れた。


〈ボス HP:83%→81%〉


「その脚……」ミチコは言った。「なるほど、そういう戦い方をするわけね。あなたの闘士強化は、下半身に宿っている……いいことを知ったわ」


ザリアは体を回転させ、高い蹴りでミチコを攻め立てた。ミチコが身をかがめる。その隙にアオイが突っ込んで突き飛ばし、続けてレオが檻をまるごと叩き落とした。


〈ボス HP:81%→79%〉


ミチコは檻を粉砕した。その傷が、ゆっくりと癒えていく。


「これだけやって、ほとんどダメージを与えられていない」レオは言った。「ニュガワさんは突っ立っているだけだ。なぜ?」


アオイが手を振った。


「えーっと、師匠! こっち! あたしたち死にそうなんで、助けてくださーい!」


オマリロは彼らへ目を向けたが、動かなかった。


今はそのときではない。まだだ。


ミチコが掌を掲げた。その中で、電気の火花がちらついている。


「この惨めな抵抗も、終わりにしましょう。力を回復させていたんでしょう、ニュガワ? でも、もうあなたの遊びには付き合わないわ」


彼女は空高く舞い上がった。


〈竜の継承者:発動〉


〈闘士を除くすべての呪源が無効化されました〉


レオとアオイがそろって地面に崩れ落ちた。起き上がると、二人とも右腕に、紫に光る腕輪がはまっていることに気づいた。


アオイが走ろうとしても、普通の速さしか出ない。レオもミチコを捕らえようと手を突き出したが、何も起きなかった。


「本当に……呪源を封じられた!」レオが息をのんだ。「あいつは何なんだ? 普通のボスじゃない! シャクマとはまるで別物だ!」


アオイが脚を動かしても、いつもの加速は得られなかった。ただ普通に歩くだけだ。


「あたしのスピード、取られた! あたし……普通の人になっちゃった!」


三人の頭上に雲が生まれ、そこから巨大な稲妻がゆっくりと降りてきた。ザリアは槍を掲げて兄と妹をかばおうとしたが、稲妻の衝撃に膝をついた。


ミチコが次の攻撃を溜める前に、オマリロが目にも留まらぬ速さで動いた。


竜の女の両腕と両脚が斬り落とされ、稲妻が消える。


〈ボス HP:79%→69%〉


ミチコが威嚇するように息を吐いた。


「本当に鬱陶しいわね、この老いぼれ! 苦しみなさい!」


両手からオマリロへ稲妻を撃ち込み、その注意が子供たちから逸れた。


オマリロは見逃さなかった。


「娘! 今だ!」


ザリアは自分を指さした。


「あたし?」


すぐに戸惑いを振り払う。


「あっ! そっか!」


全速力で走り、宙へ跳び上がる。ミチコの背中めがけて槍を突き下ろした。


「遅い」


ミチコは稲妻の刃を作り出し、空中でザリアの槍を受け止めた。片手で稲妻を撃ち続けながら、もう片方の手でザリアの攻撃を一撃ずつさばいていく。


オマリロが稲妻をミチコへ跳ね返した。ザリアはその隙を逃さず、脚を突き刺す。


ミチコの裏拳がザリアを吹き飛ばし、レオが受け止めた。


〈ボス HP:69%→67%〉


〈竜の継承者:解除〉


腕輪が消えると同時に、レオとアオイの体に力が戻った。


「ドメインが解除された!」レオが叫んだ。「アオイ、今だ! あいつの気が逸れているうちに!」


アオイがミチコの周りを駆け回った。ミチコの目は、その姿をずっと追っていた。


片手を伸ばし、アオイの首をつかむ。


そこへレオの檻が氷の塊のように地面を滑ってきて、ミチコを弾き飛ばした。


彼女が顔を上げると、ザリアが真上にいた。


「死ね、このクソ竜女!」


ミチコは紙一重で攻撃をかわし、刃を握り直して稲妻の斬撃を放った。斬撃は三人全員をかすめる。


二撃目が子供たちに届く前に、オマリロが受け止めた。


そして次の瞬間、ミチコの両目が顎もろとも斬り裂かれた。刃を握る腕は肘からだらりと垂れ下がり、彼女はわずかによろめく。


〈ボス HP:67%→60%〉


ミチコは回復すると、後方へ飛び退いた。さらに嵐雲が湧き上がり、激しい雷撃があたり一帯へ降り注ぐ。


オマリロは雲の間を素早く抜け、ミチコに迫ってその胸を斬り裂いた。


〈ボス HP:60%→50%〉


ミチコは自分の周囲に稲妻の障壁を張り、体を折り曲げて荒い息をついた。


オマリロは刃を構えたまま、その背後に子供たちが立っている。


「何をしているんだ?」レオが訊いた。


〈致死スキル:解放〉


オマリロが手を突き出した。


「伏せろ! 今だ!」


子供たちが一斉に身をかがめた。


ミチコの前に黒い電撃が巨大な光線となって集束し、まっすぐオマリロへ放たれた。金色の立方体が再び現れ、それを受け止める。


二つの力がぶつかった瞬間、爆発が起き、全員の視界を奪った。


視界が戻ると、ミチコが滝のように汗を流し、座り込んでいた。その頭上には、黒い竜の影が浮かんでいる。


〈娘よ〉


女は顔を上げた。


「お父様?」


〈この戦い、お前の負けだ。戻れ〉


「いいえ、負けてなどいません! 伝説のハンターは今日ここで死ぬ。誓います!」


影が彼女を包み込み始め、その体が薄れていく。


オマリロは見つめていた。その目に、覚えのあるものを見たときの色が浮かぶ。


この竜。その声を、前にも聞いたことがあった。


竜が首を巡らせ、彼へ向き直った。


〈ニュガワ……〉


嵐がさらに暗さを増し、稲妻が黒く染まった。子供たちが身を寄せ合う中、影は口を開き、黒い稲妻の光線を一筋放った。


当然のように、オマリロは防ぎ、近くの建物へと弾き飛ばした。


〈今も、貴様に████████████を願っているぞ〉


それ以上言葉を発する前に、影も娘も、夜の闇へ消え去った。


「逃げやがった」ザリアがあざけった。「腰抜けみたいに」


「とりあえず、いなくなってよかったじゃん」


アオイは明らかにほっとした様子で、スマホを力いっぱい握りしめていた。


「あいつのせいで髪ぐちゃぐちゃなんだけど!」


レオがオマリロに歩み寄った。


「これからどうします?」


〈チャレンジ完了〉


〈成績を評価中……〉


〈オマリロ・ニュガワ:S〉


〈レオ・タケノ:B〉


〈アオイ・タケノ:B〉


〈ザリア・タケノ:A〉


〈判定:合格〉


地面からトーテムが浮かび上がった。オマリロがそれに触れる。


「来い。子供ら、忘れるな。次のフロア、待っている」


〈トーテムシジル獲得〉


〈フロア4へのアクセスを許可〉


目の前に石の門が形作られ、その中心にポータルが開いた。


オマリロが先に足を踏み入れ、子供たちもためらうことなく、そのあとに続いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。